肩や腰に始まり、年をとるにつれ体のあちこちが痛み出すのは仕方のないこと。しかしこうした体の「痛み」に鈍感になっていると、命にかかわる大病のサインを見落とす可能性もある。かつて心筋梗塞を発症した60代男性がいう。
「私は肩に強い痛みを感じました。左の肩関節の上のほうから肩甲骨までの幅広い範囲が、ズーンと重苦しい感じで痛んだ。肩こりや四十肩の痛みとは全くの別物です。寝ている時ですら痛みは取れず、左肩を下にして寝ていると、苦痛で夜中に目覚めてしまうほどでした」
なぜ胸以外の別の部位が痛くなることがあるのか。水戸協同病院総合診療科の徳田安春教授が説明する。
「胸の中心が痛いとなれば、誰でも狭心症や心筋梗塞を疑います。また、アゴからヘソまでの前面正中線(体の前面の中央を頭からタテにまっすぐに通る線)上に痛みがある場合、もしくは背中の痛みが引かない場合は、痛みの種類を問わず、心筋梗塞を疑う必要があります。
しかし心筋梗塞が難しいのは、それ以外の部位も痛くなる可能性があること。放散痛というのですが、心臓の感覚神経と他の部位の感覚神経が脊髄と脳内で混線して、別の部位が痛いと認識してしまうのです。歯痛や肩や腕、小指の痛みがこれにあたります」
これら肩・腕・小指の痛みは、体の左側に現われる場合が多いという。心臓と同じ神経の支配領域を伝わるためだ。名古屋大学医学部附属病院総合診療科の講師である鈴木富雄氏がいう。
「心筋梗塞による小指の痛みは、どこかぼんやりした痺れるような痛みといわれます。少しでも違和感を感じたら医師の診断を仰ぐべきですが、骨折や炎症と違い、指を握ったり触ったりしても痛みが増すことはないのが特徴です」
※週刊ポスト2014年3月28日号