突然だが、コンドームの歴史を振り返ってみよう。紀元前1350年頃のエジプトには、コンドームの原型が存在していた。当時の労働者たちが、動物の腸や膀胱で作ったものを使っていたという。王族も、動物の革製で毛皮の飾りが付いた豪華品をこしらえ、墓陵の副葬品にしている。いずれもペニスの先端部を覆う鞘状のものだった。
ローマ時代には、メスのロバのたてがみを編んでつくる「魔法のコンドーム」があり、避妊や性感染症予防だけでなく、悪霊払いの効果も信用されていた。ただし、精液は網目からダダ漏れのうえ、ペニスがちくちくする代物だったようだ。
日本でも、古くからコンドームの発想が実用に供されている。8世紀には、神官や貴族が折り紙細工の「紙茎(こきがみ)」を作った。これは虎、熊、獅子といった猛獣の形の折り紙細工でペニスを包むもの。江戸期には、鼈甲や水牛の角、革製の「甲形」があって、兜よろしくペニスの先端に装着した。
現存する最古のコンドームは、1640年のスウェーデン製。豚の腸を使っており、現代のコンドームとほぼ同じ形状だ。
コンドームを発明したのは、通説によれば英国人「ドクター・コンダン」ということになっている。彼はチャールズ2世の侍医だったというが、公式な記録にその名は残っていない。
チャールズ2世は、自らコンドームを使ったばかりか軍隊や貴族に配った。以降コンドームは、コロンブスが新大陸から持ち帰った梅毒を予防するため、急速に普及していく。
さらに20世紀に勃発した世界大戦が、世界各国でコンドーム需要を煽った。兵士の性欲処理と性病予防は、どの国も悩みのタネだったのだ。素材はゴム、ラテックスへ変化し、性能、装着感とも格段にアップした。
20世紀末になると、エイズ騒動でコンドームが再評価された。避妊対策面では、中国を筆頭に人口増大に悩む国々で無料配布する例が珍しくない。世界のコンドーム推定消費量(2013年)は中国とアメリカが5億400万個、欧州が4億3200万個、日本が3億6000万個だ。
※週刊ポスト2014年3月28日号