景気回復の恩恵や消費増税前の駆け込み需要もあり、販売増に沸く日本の自動車業界。好調なのは国内ブランドのクルマばかりでなく輸入車も同じだ。
日本自動車輸入組合の発表によれば、2月の輸入車の販売台数は22か月連続で前年実績を上回り、2013年度の累計は1996年以来となる30万台超えも視野に入ってきたという。
輸入車シェアの75%を占めるのは、フォルクスワーゲン(VW)、メルセデスベンツ、BMW、アウディのドイツ車勢。特に高級イメージが根強いベンツとBMWの販売台数はそれぞれ前年同月比で60%以上の増加となり、過去最高を記録した。
そもそも、日本で長年ドイツ車が支持され続けている理由は何なのか。自動車評論家の清水草一氏が語る。
「大衆車というよりも最初から頂点を目指して丁寧に車を作ってきたことが高評価を受けている要因。
日本車で『品質』といえば壊れずに安全性の高い車を指しますが、ドイツ車は走りの追求だけでなく、実用性には関係ないボディのデザインから部品の一つひとつまでコストをかけて質感にこだわっています。
そうした精緻(せいち)さがクルマ好きの心を掴み、今の高級車ブランドとしての地位を不動のものにしたのです」
また、ドイツ車はユーザーに「高級外車」のイメージを植え付けるブランド戦略にも長けていた。経済ジャーナリストの福田俊之氏がいう。
「団塊世代前後の中高年にとっては、外車に乗ること自体がステータスの象徴でしたし、中でもドイツ車はエンブレムを見なくてもベンツだBMWだと分かる普遍的でぶれないデザインがブランド価値の持続につながっています。
もっとも日本では大手外車ディーラーが価格を下げなかったことで、“手が届かない憧れのクルマ”のイメージが保たれた面は大きいでしょうね」
しかし、いつまでもドイツ車がステータスシンボルであり続けるとは限らない。なぜなら、日本市場はダウンサイジング(小型化)が急速に進んでいるからだ。