その流れにドイツ車も逆らえず、いまや日本での売れ筋は200万円台から買えるベンツの小型車(Aクラス)やVWのコンパクトカー「up!(アップ)」、アウディのエントリーモデル「A1」など、いずれも小型車が販売台数を押し上げている。BMWも今年中には日本で小型ハッチバック車を発売する予定だという。
ドイツ勢が揃って「手の届く」コンパクト分野に参入することで、かえって日本車のブランド力が高まっているとの声もある。
「300万円で小型外車に乗るぐらいなら、同じ値段で国産のハイブリッド車を買ったほうが維持費もかからなくていいと話すお客さんはいます」(都内の輸入車ディーラー)
こうしたチャンスは逃すまいと、ドイツ車に後れをとる日本メーカーのプレミアムブランド戦略も着実に広がりを見せている。日産自動車は新型『スカイライン』に海外向け高級ラインだった「インフィニティ」バッジをつけた車を発売した。
また、トヨタ自動車は高級車ブランド『レクサス』の主力車種(LS、GS、IS)に加えて、コンパクトサイズ「CT」の売れ行きが好調。今後はSUV(スポーツ多目的車)やスポーツカータイプのレクサスなど幅広いジャンルの車種を揃えてドイツ車に引けを取らない“クラスプレミアム”の高級感を打ち出していく構えだ。
「レクサスは走行性能を高めてトヨタが誇るハイブリッド技術を詰め込むなど技術力は決してドイツ車に負けていません。
課題だったデザイン性も豊田章男社長が開発キーワードに据えた“エモーショナル(感性に訴える)”の号令の下、フロントマスクに大きな台形型の『スピンドルグリル』で統一させるなどしたため、一目でレクサスだと分かるようになりました」(前出・福田氏)
ドイツ車こそがプレミアムカーの代名詞――。そんなブランド信仰は徐々に薄らいでいくのかもしれない。