F記者がそうしたことを知らなかったとは思えないが、取材目的で入手した情報を別の目的に使ったのだから、報道倫理の問題に加え、個人情報保護法違反も疑われよう。当然、「共同通信記者」としてF氏が取材し、シンポジウムに参加していた以上、共同通信社としての責任も問われる。
同社総務局はデータの横流しの事実を認めたうえでこう答えた。
「個人情報保護法の趣旨に反し、記者倫理を大きく逸脱する行為と深刻に受け止めており、関係者におわびします。当該職員からシンポジウム参加の届け出はなく、会社の許可なく社外業務に従事するのは就業規則違反にあたる。社内の審査委員会で経緯と詳細を調査中ですが、調査がまとまり次第、厳正に対処します」
また、個人情報データを横流しされた約140人への対応については、「個人情報の中身を点検の上、取材源の意向を踏まえて判断したい」(同前)というが、知らぬうちに、面識もない第三者のF記者によって病歴を公の場で“暴露”された140人の不安と不信は簡単に消えるものではないだろう。
共同OBはこう嘆く。
「昨年の人事部長の不祥事は、社長退任(6月)に繋がる大問題となった。今回の問題は一記者の不埒な行為では片付けられず、報道機関としての在り方にかかわる。対応を間違えれば、2年連続の社長退任という事態にもなりかねない」
※週刊ポスト2014年4月4・11日号