今秋のプーチン大統領訪日は、北方領土交渉の正念場となる。北方領土交渉について、両首脳は慎重な発言に終始しているが、基本的な2つの方向性について合意している。
第1は、平和条約交渉に関する外務次官級協議(日本側団長は杉山晋輔外務審議官、ロシア側団長はモルグロフ外務次官)で論点を整理し、解決できない部分を首脳間の決断で解決する。第2は、経済協力、安全保障協力を拡大する中で、北方領土問題解決の環境整備を行なう。
安倍首相は、日本側の交渉スタンスのハードルを下げている。2月7日、ソチに向けて飛び立つ直前、東京の北方領土返還要求全国大会の挨拶で、「明日、プーチン大統領と5回目の首脳会談に臨みます。私は日露関係全体の発展をはかりつつ日露間に残された最大の懸案である北方領土問題を最終的に解決し、ロシアとの間で平和条約を締結すべく、交渉に粘り強く取り組んで参る決意であります」と述べた。
安倍首相が「四島」に言及しなかったことをクレムリン(露大統領府)はシグナルと受け止めている。「北方領土問題を最終的に解決し、ロシアとの間で平和条約を締結すべく、交渉に粘り強く取り組んで参る決意」ということは、四島の日本への帰属確認を前提とせずに交渉を行ない、解決の出口を探るという「出口論」を安倍首相がとっていることを強く示唆するものだ。
※SAPIO2014年4月号