「プチ贅沢」「憧れ消費」といった言葉が踊る昨今の高額消費傾向。中でも人々の食欲を満たす外食産業は、消費増税の影響などものともせず売り上げを伸ばし続けている。
特にご馳走の代名詞、ステーキの人気は凄まじい。2000円前後で米国産の厚切りステーキを堪能できるファミリーレストランや、国産フィレ肉300gのステーキが7000円以上もするような高級ステーキハウスまで業態や種類はさまざまだが、高価格な専門店でも平日から予約で満席になることも珍しくない。
ステーキ市場はどれほど熱いのか。市場調査会社の富士経済によれば、ステーキ・ハンバーグをメインメニューに掲げるファミリーレストランは全国に1600店以上あり、売上高は1860億円(2013年見込み)。
さらに、ステーキハウスをはじめとする専門店も1700店以上、770億円の売り上げがあるので、ざっと総市場は2500億円を超える規模でいまも拡大を続けている。
だが、大手チェーンのみならず、他業態からの専門店化などが一気に進んだことで、肉を巡る競争は激しさを増しているという。
「すかいらーくの『ステーキガスト』やロイヤルホストの『カウボーイ家族』、居酒屋チェーンを展開するコロワイド傘下の『ステーキ宮』、吉野家グループの『ステーキのどん』など次々と専門業態のチェーン展開が加速しているために、熾烈なシェアの奪い合いが起きている」(外食専門紙記者)
それでも市場はまだ飽和状態にはなっていない。最近、「ペッパーランチ」を展開するペッパーフードサービスが、銀座に1g5円~好みの分量で注文できる立ち食い店「いきなりステーキ」をオープンさせて話題になっているように、まだまだ新業態が台頭する可能性を秘めている。
それにしても、まだ多くの庶民は給料アップによる景気回復を実感できていない中、どうしてここまでステーキ人気が高まっているのか。フードアナリスト(日本フードアナリスト協会所属)の重盛高雄氏が解説する。
「長らく続いた“デフレ疲れ”が大きな要因。可処分所得は増えていなくても、安かろう悪かろうの外食で我慢するくらいなら、他の日用品などでコツコツと節約し、浮いた分で少しでも美味しいものを食べたいという消費者が増えているのでしょう。
中でもステーキは価格に見合った素材の良さが分かりやすいメニューなので、財布のヒモも自然と緩んでいるのだと思います」
しかし、旺盛なステーキ消費だけをもってして、デフレ脱却が進んでいるとみるのは早計だ。
「賃上げの裾野がどれだけ広がるか不透明ですし、TPPにより外国産の食材を安価で調達するようになれば、外食産業全体の客単価も思うように上がっていかないはず。いずれにしても今夏のボーナス時期が真の消費意欲を計るうえで重要なタイミングになるでしょう」(前出・重盛氏)
日本経済はどこまで“肉厚”なスタミナをつけられるか。