最近では、個人のスキルアップを会社がサポートする例は少なくない。しかし、会社の指示で専門学校に通い始めたようなケースでは、支払いを巡ってトラブルが生じることもある。会社の命令で専門学校に通っていた時、会社が倒産した場合、支払い義務は誰にあるのか? 弁護士の竹下正己氏はこう回答している。
【質問】
会社の命令で英語の専門学校に通っていたのですが、会社が突然倒産。入学金と一期目の学費は会社が払ったのですけども、二期目の学費と教材費は私に請求がきています。入学は会社の指示であり、請求に戸惑っています。本来なら会社が負担すべきですが、それでも私が支払わなければいけないですか。
【回答】
会社が直接社員の教育を申し込んでいれば会社の契約であり、学費の支払い義務者は会社です。あなたに責任はありません。会社の命令とはいえ、社員が個人の資格で入学を申し込んでいれば、契約当事者はあなたですから、在学する限り、学費の支払い義務はあなたにあります。会社は費用負担をしていただけです。
しかし、入学申し込みは社員個人でしても、学費を直接会社から学校に振り込んだり、学習成績が学校から会社に通知されるなど、学校と会社との間に直接的な関係がある場合には、会社と学校との間で、第三者である社員個人のためにする在学契約が締結されたと解されます。会社が社員個人を特定して入学を申し込んだ場合と同じです。
社員個人に教育を受ける権利が発生し、学校は当該社員個人を教育する義務が生じますが、その対価である学費は、第三者のためにする契約を締結した会社の負担です。
あなたが契約当事者の場合でも、特定商取引法の定める継続的役務提供契約に当たれば、将来に向けて契約解除できます。二期目が開始前の場合、違約金の定めがあっても、1万5000円以上の請求は認められません。
学校教育法による専門学校には、この法律の適用はありません。しかしながら、消費者契約法が適用されます。今後の学習が不要の場合、その継続は不合理です。入学関係の書類を確認してください。中途退学の場合、違約金を支払わなければならないとか、あるいは入学金を返さないなどの決まりがあると思います。
しかし消費者契約法では、中途解約で業者に生じる平均的損害を超える額以上の違約金の定めは無効になります。そこで今の時点で、退学した場合の扱いが不当と思われるときは、消費者センターなどで相談するのがよいでしょう。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2014年5月2日号