移民受け入れを議論する上で決して無視できないのが、移民の出生率の高さだ。移民の第1世代はマイノリティだったとしても、世代を重ねることで勢力が拡大される。
EU諸国ではそうした傾向が顕著に現われている。スペインの外国人比率は1980年代まで1%程度だったが、今では15%に迫っている。ドイツやスウェーデンも人口の約15%は外国人だ。スウェーデンでは移民の失業率が16%に上る。
若い移民に至っては約40%に上る都市もあり、社会保障制度を蝕んでいる。文化や宗教上の対立など、移民を巡る社会問題も深刻だ。また、EU諸国からの移民が急増したスイスでは今年2月、移民流入規制を巡る国民投票が実施され、過半数の50.3%が流入規制に賛成票を投じた。
日本政府は毎年20万人の移民を受け入れることで100年後も人口1億人を維持できると試算するが、出生率の高い移民ばかりが増えれば、純粋な日本人は5000万人を切り、国民の半数以上が外国人という事態も起こり得る。はたしてそれで「日本」と言えるのか。率直な疑問が湧いてくるのは私だけではあるまい。
※SAPIO2014年6月号