5月9日、春の叙勲の大綬章勲章親授式が宮中「松の間」で行なわれたが、勲章・褒章はすべて、大阪の独立行政法人・造幣局に所属する職員80余名の手作業で製造されている。
最高勲章に位置づけられる「大勲位菊花章頸飾」(22金製)以外、すべて純銀製。切り抜いた章身の形をヤスリで整え、電気焼成炉で七宝焼きにする。その後、研磨や金メッキが施され、部品を組み立てて完成に至る。
工程自体はシンプルだが、各作業はまさに熟練職人の手による匠の技。完璧な美しさを求め、膨大な手間が費やされる。たとえば、数年にひとつという製造サイクルの最高ランク「大勲位菊花章頸飾」は、1人で手掛ければ優に1年掛かるという。
製造法は古くから伝承されたやり方。だが、ヤスリなどの道具は各職員が手作りし、作業にも創意工夫を凝らす。僅かな振動も手元を狂わす原因となるため、安定感のある木製の机を使用。作業する台の厚みは10cmもある。管理は厳重を極め、1日の仕事は作業途中のものもすべて金庫に納めて終了となる。
課題は製造技術の継承。熟練者がマンツーマンで若手を育てる伝統が熟練の技を後世に伝える。最初は下級勲章の仕事から始め、10年ほどでようやく小綬章に携われるという。「大勲位菊花章頸飾」の技量を持つ熟練者は現在5~6人ほど。長年の功績は日本の技術の粋で称えられる。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2014年5月23日号