大好きな『白夜行』(東野圭吾著)について語る町田樹選手
「町田樹史上最高傑作」のショートプログラムを披露した先の世界選手権。その後のインタビュでー、アスリートとアーティストが「せめぎあっている」とも語っていた。この“葛藤”の行き着く先を聞いた。
「ジャンプ命という技術至上主義の選手もいますが、僕は芸術志向です。ただ昨シーズンは勝たなければオリンピックに行けない、勝つためには4回転が必要、でも4回転を飛ぶと多少なりとも芸術性が損なわれるかもしれない、が損ないたくないという葛藤の渦の中にいました。
そんな中で気づいたのは、ジャンプも磨きに磨けば芸術になるということです。世界選手権で観客のみなさまがあれだけ感動してくださったのは、完璧な4回転3回転を決めたからということも大きい。アスリート町田樹を磨くことは、芸術を志す町田樹――まだ、アーティストと言える立場ではないので――を磨くことにつながるのだと気づきました。
いまはもう、技術と芸術を分けて考えていません。これからは、メダルをとるためではなく、よい作品を届けたいというモチベーションで滑りますが、4回転は飛び続けるでしょう。芸術的な演技のためには、高い技術が必要だからです。どんな方もそうだと思いますが、僕もフィギュアスケートをしている中で、いろんな葛藤がある。だけど多くの人やそして本の力を借りながら、なんとかここまで来ることができました」
■プロフィール
町田樹(まちだ・たつき)
1990年神奈川県川崎市生まれ、広島市育ち。関西大学在学中。3歳よりフィギュアスケートを始める。高橋大輔選手に憧れ高校、大学と同じ道を歩む。2013-14シーズンの世界選手権は羽生結弦選手(優勝)に0.33点の僅差で2位。趣味は読書のほかに音楽鑑賞、ファッション、紅茶
■撮影/山崎力夫