「何でも読む、最後まで読む」がポリシーと町田樹選手
他の愛読書を問うと、口をついて出くるだけでも東野圭吾、沢木耕太郎、『たったひとつの冴えたやりかた』で知られるSF作家・ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、ヘーゲルの哲学書まで幅広い。ノンフィクションや新書も読む。この“懐の深さ”は、町田選手を理解する一つのキーワードのようだ。
「僕のポリシーは何でも読むし、最後まで読む。まず、読み始めたら最後まで読みます。じゃないと次にいけない性格(笑)。だから、僕の趣味にあまり合わなかった本も、95%理解不能でも、悪態をつきながらでも読む。そうすると後に、あの時読んだ言葉ってこのことだったのかなとふと気付く瞬間があるんです。たまにですけど。
ジャンルも選びません。どんな登場人物も物語も受け入れられないということはほとんどありません。好き嫌いがないのは本に限ったことではないですね。食べ物にもない。子供の頃は刺身が苦手だったのですが、嫌い嫌いといいながら食べているうちに好きになっていました。
人間関係でも、苦手だなと思う人がいたら、あえてコミュニケーションをとって、なぜ自分が苦手と感じたのか知りたいと思う。いろんな人の考えを知って刺激を受けたいし、そうすることで自分の考えが構築されていくのが心地よいんです。
ただ弊害もあって、一貫性が薄れる場合もある。一年前の発言と違うじゃないか、と思われる方がいらっしゃるかもしれません。それは人やもの、そして本に影響されて僕自身が変わっていっているからで、ご理解いただけたら幸いです(笑)」
■プロフィール
町田樹(まちだ・たつき)
1990年神奈川県川崎市生まれ、広島市育ち。関西大学在学中。3歳よりフィギュアスケートを始める。高橋大輔選手に憧れ高校、大学と同じ道を歩む。2013-14シーズンの世界選手権は羽生結弦選手(優勝)に0.33点の僅差で2位。趣味は読書のほかに音楽鑑賞、ファッション、紅茶
■撮影/山崎力夫