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経産省発表「東証一部上場企業46.7%がベア実施」は眉唾もの

 茂木敏充・経済産業大臣は5月30日の記者会見で、「アベノミクスの成果が確実に波及している」と、胸を張り、東証一部上場企業の46.7%がベアを実施したという独自の「春闘中間集計」を発表した。

 新聞、テレビはこぞってこの調査結果を報じ、ある報道番組ではコメンテーターの学者が「安倍総理は企業に賃上げを働きかけてきた。企業側が政府に協力した結果です」とヨイショしてみせた。

 しかし、多くのサラリーマンは信じていない。とっくに賃上げが夢物語だと知っているからだ。それでもなお政府は「サラリーマンの給料は上がっている」という世論操作を続けている。経産省調査の大嘘を暴いていこう。

 発表資料によると、調査対象の東証一部上場企業は1762社、そのうち回答したのは927社で、「ベアを行なった」企業は399社(5月14日時点)である。「回答しなかった企業」がベアを実施したとは考えにくい。ならば、1762社中399社がベアを実施した、すなわち「ベア実施は22%」というべきではないのか。連合の集計(6月2日時点)でも、ベア実施で妥結したのは約16%(8753組合中1404組合)にとどまっている。

 不思議なのは、経産省の資料には、〈平成26年度のベースアップ実施企業割合が46.7%〉とはっきり記載されているのに、それをヨイショする新聞は各紙ともベア実施企業の割合を「43%」と報じたことだ。

 どうして食い違うのか。理由は「分母」の違いだ。新聞は割合を計算する際、東証一部上場の全企業ではなく、「回答企業」(927社)を分母にしている。これで22%のはずが「43%」へと2倍に水増しされた。

 ところが、経産省はそれではまだ足りないと考えたのだろう。回答企業数からわざわざ「賃上げしなかった企業」を除外し、「何らかの賃上げを行った企業」(855社)を分母にして「46.7%」という数字をひねり出した。二重の水増しで「大企業のほぼ半数がベアを実施した」という印象を国民に植え付けようとしたのだ。

※週刊ポスト2014年6月20日号

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