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緩くなった健康診断新基準は「気づきのチャンス奪う」と医師

 高血圧だといわれて降圧剤をのみ続けてきたのに、ある日突然、「今日から基準値の範囲内です」と言われたら、戸惑わない人はいないだろう──。4月に発表された健康診断の新基準が波紋を広げている。

 新たな健診の基本検査の「基準範囲」(以下、新基準)は、約150万人にも及ぶ人間ドック健診受診者の中から、一定の条件を満たした“超健康人”約1万~1万5000人を抽出し、その検査値から基準範囲を出したもの。なぜ波紋を広げているかというと、日本人間ドック学会の現在の基準値に比べてかなり緩くなっているからだ。

 生活習慣病の予防に取り組む池谷医院院長の池谷敏郎さんは、基準値が緩くなることの危険性を指摘する。

「生活習慣病は10年、20年をかけて進行する病気なので、早めにリスクに気づいて対策をとることが重要です。健康診断の基準を甘くするのは、気づきのチャンスを奪うのと同じです」

 性差医療や加齢医学を専門とする関東中央病院健康管理科部長の宮尾益理子さんは、「膨大なデータから性別や年齢による検査値の違いが明らかになったのは、大きな意味がある」と発表を評価する一方で、警鐘も鳴らす。

「抽出した“超健康人”は現在健康に見えても、将来健康であると証明されてはいません。現時点の超健康人の数値の範囲内にあるからといって、当人の健康に問題がないとはいえません」

 学会の発表の仕方に問題があったと振り返るのは、女性医療ジャーナリストの増田美加さん。

「“新基準”という言葉が独り歩きし、基準値が変わるという誤解を招いてしまいました。これは、あくまでも自称健康な人から抽出した数値というだけ。この数値が何を意味するのかを、今後時間をかけて検証していく必要があります」

 新基準の範囲内だから、健康であると考えるのは危険だ。

※女性セブン2014年6月26日号

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