<健康寿命 浜松1位>──5月27日付の朝日新聞朝刊にその見出しが掲載されて以降、浜松市役所には取材依頼が相次いでいるという。同市健康増進課の担当者が語る。
「雑誌や新聞からの問い合わせがあるほか、関西のテレビ局からも複数の取材申し込みがありました。市民からの問い合わせは特にないのですが、メディアが先行して取り上げようとしている印象です」
騒動の発端となったのは厚生労働省の研究班が全国20大都市の「健康寿命」データ(2010年時点)をまとめた報告結果だ。
「健康寿命」とは、日常生活に支障がない状態で生活できる期間を指す。一般的な「平均寿命」から、入院したり要介護状態になったりする期間を差し引いたもので、国の成長戦略でも〈国民の「健康寿命」の延伸〉が掲げられるなど、近年注目される指標だ。
浜松市は男性72.98歳、女性75.94歳で男女ともに1位。同じ静岡県の静岡市(男性71.28歳=5位、女性74.63歳=2位)が上位で続き、最下位には男性が大阪市(68.15歳)、女性が堺市(71.86歳)と、大阪府下の都市が並んだ。
都市別のデータが公表されるのは今回が初めてのことだったので、「なぜ住む都市によって元気に生きられる期間が変わるのか」の理由探しにメディアが躍起となっているのだ。
「関西のテレビ局は最下位だった大阪と浜松の生活習慣を比較した番組を作りたいようです。ただ、各社の取材でよく出る『何が浜松の長寿の秘訣なのでしょう?』という質問にはなかなかお答えしにくい。『特産品である緑茶が体にいい』とか『みかんを食べると長生きできる』といった答えを期待されているのでしょうが、一概に断言はできません」(同前)
たしかに今回の厚労省研究班の報告を受けて「健康寿命」を取り扱った記事は、〈「健康寿命」を延ばす方法〉(『週刊文春』、6月12日号)、〈お茶、スッポン、ウナギ…浜松市が健康寿命1位になったワケ〉(『サンデー毎日』、6月15日号)など複数あるが、浜松市の名産品と関連づけようという、いかにも安易な企画だ。
市役所の担当者が困惑するように、本当に浜松の名物を食べれば「健康で長生き」を実現できるのかは定かでない。
※週刊ポスト2014年6月27日号