国際情報

台北の中国人観光客 あまりにうるさくて日本人観光客が激減

「ひまわり学生運動」と称された学生による国会占拠に続き、反原発デモなど社会が騒然としてきた台湾。野党・民進党は新しい党首を選んで、早くも再来年の総統選挙に向け動き始めた。この激動のきっかけは馬英九・政権の親中国政策だった。日米という古くからの盟友と”新しい友人”を天秤にかける馬政権の姿勢は国民の間に大きな路線対立を引き起こした。台湾の現状をジャーナリスト・相馬勝氏が現地からリポートする。

 * * *
「ダン、ダン、ダン!」

 ホールに響き渡る巨大な打撃音に、一瞬、人々の間に緊張が走り、喧噪がウソのように引いて沈黙が場を包む。

 台北市の中心部にある中正紀念堂。巨大な堂内に鎮座する蒋介石総統の座像を守る儀仗兵の1人が、右手に持っていた剣付き銃の銃床を床に叩き付けた。

 紀念堂の儀仗兵は、普段はまるで蝋人形のように微動だにしないことで有名だ。兵士が汗をかけば傍らの衛兵がハンカチで拭い、軍装の乱れを直すなどの世話をする。

 しかし、彼らはただのパフォーマーではない。建国の英雄を守る任務を負うれっきとした兵士だ。大きな衝撃音を立てたのは、不届き者に警告を与えるためである。5月の平日だったこの日、紀念堂は中国大陸からの観光客でごった返し、カメラを手にした一団は、像の前に張られたロープから大きく乗り出して大騒ぎしていた。しかも、「蒋介石は毛沢東主席に負けて台湾に逃げてきたのだ」などと儀仗兵の神経を逆なでする解説をする者もいた。

 台湾人兵士にとって中正紀念堂は神聖な場所だ。陸海空軍から選りすぐられたエリートである儀仗兵にとって、神聖な場所が冒され、蒋介石が侮辱されれば、十分に警告を与える理由になるのである。しばらく見ていると、中国人観光客の不埒な行為は1回で終わらず、わずか30分ほどの間に儀仗兵は5回も銃を床に打ち付けた。

 最近、台北市内の観光名所は例外なく中国人観光客であふれ返っている。市郊外の故宮博物院はルール無用の中国人観光客が大声で闊歩し、「あまりのうるささに日本人観光客が激減した」と地元の日系企業関係者はため息をつく。有名な彫刻「翠玉白菜」の展示室の前には100mを超える行列ができ、中国人以外の観光客は何時間もうんざりしながら並び続けていた。

 市中心部の長春路の一角は市内で観光バスが停車できる貴重な場所だが、中国人観光客がタバコの吸い殻や食べ物、ペットボトルなどを投げ捨て、ところ構わず痰や唾を吐くことから、なんと近隣マンション価格が暴落してしまったというから驚きだ。

※SAPIO2014年7月号

関連キーワード

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン