過去にも日本の個人投資家層が、市場を支配した時期がありました。2005年の9月からの3か月間、日本の個人投資家層はキャリートレード(高金利通貨買い低金利通貨売り)で大儲けしました。
ドル/円やクロス円は一本調子に上がったため、逆にプロはこの上げに乗り切れず、どこかで調整があるとばかりに、売り上がっては締め上げられて万歳となり、「個人投資家層がプロに勝った」とまで新聞に報じられていました。12月に入ってもマーケットの熱気は「この相場はまだ続く」と鼻息荒い状況でした。
そんなところに米貿易収支の発表があり、収支は予想より悪い結果が発表されました。 その当時でも、米貿易収支はもうそれほど注目を浴びない指標でしたが、この時の売りはいつもとは違う強烈なもので、ドル/円で5円強急落しました。
その後、結局9月から上げたクロス円の約13円もの利益はすべて返上した格好となり、本邦勢は総崩れとなりました。あとになって聞いたところによりますと、9月にドル/円のロングをしこんだシカゴ筋が、貿易収支の発表を利益確定のタイミングに使ったということでした。
確かに、今の日本の個人投資家層の市場占有率は、2005年当時とは比べものにならないほど高くなってはいますが、個人のFXだけでなく外国為替市場全体におけるビッグプレーヤーは、まだまだ世界中にはいますので、くれぐれも、自分たちが市場を支配していると思うことは禁物です。相場に謙虚であることが、マーケットで長生きする秘訣です。
※マネーポスト2014年夏号