「職人が極めた茶筅を超える道具は無いと確信し、茶筅の形を観察し小さなスリット状の回転羽根に茶筅の機能を落とし込んでいったのです。低速と高速の回転を組み合わせ、やっと細やかな泡立ちを実現できました」

 優れた新商品を出しても真似されやすいのがデジタル家電だ。しかし、「お茶プレッソ」は前例となるデジタルデータが無い。職人の経験値、その結晶としての臼や茶筅という道具があるだけだ。

「だから簡単には海外メーカーが真似できないし、パテント(特許)もおさえてあります」

 液晶技術を軸足にデジタル家電へと依存を深めていった結果、苦境に立たされたシャープ。しかし今、もう一度、「目のつけどころがシャープでしょ」という原点回帰がスタートした。

 血みどろの競争を強いられるレッドオーシャンではなく、誰も競合相手のいないブルーオーシャンへ。さらには和文化を取り入れた独壇場の「グリーンオーシャン」へと漕ぎ出したのだ。

「ヘルシオお茶プレッソ」の挑戦は、リノベーションから「和ノべーション」へと向かう、日の丸家電の新しい道筋を指し示してはいないだろうか。
 
※SAPIO2014年10月号

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