──過去のインタビューでは、「男としてサムライの生き方に憧れますし、そういうのを若い人たちに見てもらいたい」と語っていましたが、今の時代には、ありえない生き方ですが…。
役所:本当にね。今、「会社のために命をかけて働く」っていうような男も少なくなっているでしょうし。
──それにしても、数年後の切腹が控えていて、心穏やかに暮らせますか。
役所:葛藤はあったと思いますが、達観しているように見えるということが大事なんだと思います。
彼も家譜の編纂や農作業を黙々と行なっているときは無心になれたでしょうが、子供を見るときに、「この子が元服になるまであと何年か」と、ふと限られた時間を思ったでしょう。ある種、家族のために死んでいくという一面もあった。先祖代々、その土地で暮らし、国が平らかであってこそ、家族が平穏に生きていける。そうした国に対する感謝の思いは、今の我々の想像を超えたものなのではないかと。
※SAPIO2014年11月号