UFOキャッチャーをヒントに『ボルト戦隊取れるんじゃー』を作った俵さん
「自動車の組み立てというと、いろいろなパーツを取り付けていくイメージがあると思いますが、私の担当はいったん取り付けられたドアを、組み立て作業がしやすいように一時的に取り外す部署です。これまでは電動ドライバーでボルトを緩めてドアを外したあとに、ドライバーにくっついたボルトを手で取っていたのですが、この手間と時間を短縮できないかと考えたのが『ボルト戦隊取れるんじゃー』です」と語るのは、マツダ・本社工場 第1車両製造部の俵賢一さんだ。
電動ドライバーはボルトやねじが落ちたり紛失したりしないように、磁石で固定できるようになっているものが多い。便利な機能ではあるが、日曜大工と違って大量のボルトを扱う工場では、その取り外しの手間や時間も積み重なれば大きい。俵さんの組立ラインでは、53秒ごとに1台の車が完成していくというからその作業も相当なものだ。
「ドライバーの先についたボルトを自動的に取り外すにはどうしたらいいか……。そのアイデアのきっかけとなったのは、ゲームセンターのUFOキャッチャーでした。アームが物を引っ掛けて、穴に落とす。この動きを活かしてボルトを外せないかと考えました。ドアの蝶つがいにバネを取り付けたものをUFOキャッチャーのアームの代わりとし、ここにボルトを引っ掛けて外します。ホームセンターで購入したり、工場の廃品などを活用したりした基本部品は、蝶つがいとバネとペットボトル。629円の材料費でボルト1つにつき0.6秒の時間短縮ができました」(俵さん)
この『ボルト戦隊取れるんじゃー』は特定の部署で効果を発揮している例だが、1つの改善が水平展開され、工場全体で大きく活用されているからくり改善もある。それが『同期台車』だ。