──つまり、日本人の英語力の低さが留学の障壁となっている。本来、留学とは「語学を学ぶ」機会ではなく、「海外の知見を学ぶ」機会のはずなのに。
マ:今、私たちの大学で最も多いのは香港からの学生で、留学生全体の3分の1以上を占めている。香港では英語が公用語だから留学のハードルが低いのだろう。
──アジアの英語力ランキング(TOEFL得点の国別ランキング)で日本は最下位という調査結果があり、政府は小学校から英語教育を始めることを検討している。
マ:日本政府がそのことを懸念するのは当然だし、小学校から英語に触れさせるのは一つの解決策だ。ただし、より大切なのは学び続けることだ。「Use it or Lose it(使うか失うか)」とはよくいったもので、使う機会を積極的に作らなければ語学力は失われてしまう。
──多くの日本人は「発音がおかしくて恥ずかしい」と考え、機会を失っているように見える。
マ:他人がどう感じるかを気にかける奥ゆかしさは日本人の美徳ではある。また、英単語の中に日本語を母語とする人が発音しにくいものが含まれるのも事実だ。ただ、泳ぎを身につけるためには、まずプールに飛び込まなくてはいけない。
完璧な英語の話者などほとんどいない。英語は実は非常に複雑な言語だ。ほとんどすべてのルールに例外があるし、どんどん変化している。それは歴史的に見れば当然のことで、現代の英語はロマンス諸語(ラテン語系の言語)、ドイツ語をはじめ多くの言語と影響を与え合いながら生まれたハイブリッド言語だ。
人種のるつぼと呼ばれるアメリカで、昔はヨーロッパ各国の出身者が、最近ではヒスパニック系が「アメリカ人の英語」に様々な影響を与えてきたことからもわかるように、「英語」は一つではない。
※週刊ポスト2014年10月24日号