香港の大富豪で、長江実業集団の総帥である李嘉誠氏が香港の中心部を占拠している民主派学生に対して「皆さんが不用意に激昂するようなことがないようにしてほしい。今日の情熱を明日の後悔に変わってはならない。運動参加者はすみやかに家族のもとに帰るべきだ」と声明を発表した。香港を変革したいとの学生らの心情には理解を示しながらも、ただちに運動を放棄して帰宅すべきだと呼びかけた。李氏が政治的な発言を行なうのは極めて異例だが、それだけ事態が切迫していることを示しているようだ。
李氏の声明は中国共産党機関紙「人民日報」(電子版)を通じて報じられており、中国当局の要請で発表されたとみられる。
それによると、香港は中国返還後、「1国家2制度」の原則の下、香港人の生活はしっかりと守られているとしたうえで、香港の政治制度は「50年間不変」であり、未来は保障されているのだと強調。
「学生らの情熱は充分よく理解できるが、知恵を持って今後の人生を切り開くべきだ。すべての人々は法を守っていかなければならない」と述べて、学生らの自制を求めるともに、「香港の警察は法律を守ろうとしているだけだ。もし、法律に従わなければ、香港の将来にとって最大の悲劇となるだろう」と強調し、今後、香港警察による武力鎮圧を示唆した。
李氏は学生らに対して、「お父さんやお母さん、家族、あらゆる香港人、さらに中央(北京)の人々は皆、香港の若い人々のことを気遣っている。一部の香港青年の要求はすでに成功しているのだ」と指摘し、運動を止めるように呼びかけている。
これについて、ネット上では「非常に理性的な意見だ」との肯定的な書き込みもあるが、李氏は今年3月、中国メディアで「香港は甘やかされた子供のようなもの。ポピュリズムはひどくなるばかりで、あと5、6年も続けばダメになる」と述べており、李氏は最近、中国寄りの発言が多くなっている。