ギニアで始まったエボラ出血熱の爆発的な流行は、またたく間にリベリア、シエラレオネなど近隣の国々に被害を広げ、ついには海を渡りアメリカ、ヨーロッパにまで飛び火した。感染者は10月22日までに9900人以上、死者は4800人を超えた。
人から人への感染ばかりが目立って報道されるが、リスクは他にもある。国立感染症研究所獣医科学部の森川茂部長はむしろ動物を媒介とした感染を問題視する。
現在、エボラウイルスの自然宿主とされているのは数種類のコウモリだ。ウイルスは持っているものの発症しないため、感染源となる。だが、コウモリだけが危険なわけではない。スペインではエボラウイルスに感染した看護師の飼い犬が殺処分された。
「犬への感染を検証した論文があります。2002年にアフリカのガボン共和国でエボラが流行した際に、フランス、ガボン、カメルーンの研究チームが行なったものです。流行地の犬、ガボンだけど流行しなかった場所の犬、さらにフランスに住んでいる全くエボラとは関係ない犬。この3つのケースを合わせて検証しています。
結果、流行地の犬にエボラウイルスの抗体陽性(感染している、もしくは過去に感染したことを意味する)という結果が出た犬が顕著に多かった。つまり、犬もエボラウイルスに感受性があるだろうという結論です。ただ、これまで犬が発症したという例はありませんから殺処分にするかの判断はケースによって異なってくるでしょう」(森川氏)
恐ろしいのは研究が行なわれていない動物のほうが圧倒的に多いことだ。
「これまで犬のほかに調査されたのはサル、ブタ、コウモリ、人間、ある種のレイヨウ(牛の仲間)くらいで、それ以外の動物については全くデータがありません。例えば日本ではサルは基本的に輸入禁止です。輸入できるのは『日本政府が承認した国』『日本政府が承認した繁殖所』のものだけです。さらに輸入前検疫と、輸入後での検疫もおのおの30日間行ないます。ですから、ウイルスを持っている個体がいればそこではじかれます。
ところがすべての動物に対してそうした対応をしているわけではありません。ブタはエボラウイルスに感染することが確認されていますが、ブタに近いイノシシなども同じようにエボラに感受性のある個体がいるかもしれません。それが絶対に日本に入って来ないとはいえないわけです」(森川氏)
※週刊ポスト2014年11月7日号