特別永住者は事実上、年金や生活保護などの社会保障でも日本人と同等の扱いを受けている。2014年7月には最高裁が「外国人は生活保護の対象にはならない」という判決を出したが、運用は自治体任せというのが実態だ。
本来、社会保障は国籍のある本国に第一義的責務があり日本が代行する義務はない。「国家は防衛共同体であり、その構成員を助け合う」というのが社会福祉の趣旨だからだ。たとえば軍人恩給は、国のため戦い傷ついた人を国が面倒を見る、という発想に基づいた制度で、これが現在の年金制度の土台になっている。
国民年金については、難民条約批准による法改正で1982年に国籍条項が撤廃され、外国人である在日コリアンも年金に加入できるようになった。
その上でなお、彼らは当時35歳以上だった人が年金加入資格を満たせず「無年金者」となったことに対し、各地で「障害者無年金訴訟」や「高齢者無年金訴訟」を起こした。これらは最高裁まで争われたが、いずれも原告が敗訴している。在日コリアンはこれを民族差別とするが、あくまで年金制度の不備によるものだ。
歴史的な事情は各国で異なるが、長いこと海外で暮らしながら、居住地の国籍を取得しない韓国・朝鮮人がこれほど多い国は日本だけだ。在米コリアンの多くが米国籍を取得するのはなぜか。国籍を持たない者は、制度上の差別に直面するからだ。職業が限定され、州によっては税制面で不利益を被るケースもある。
ところが日本では、国籍を取らなくても何らデメリットが生じない。むしろ、事実として特別永住者は日本と母国を自由に往来し、無制限に財産を形成できるメリットまである。再入国も容易だ。特別永住者にとって、日本がとても居心地の良い国であることは間違いないだろう。
これは在日コリアンの意識の問題ではなく、あくまで制度としての問題である。
在日コリアンの中には、日本国籍取得のハードルが高いという声もあるが、1990年代以降は特別永住者に対する帰化申請の手続きも緩和されている。日本政府が本腰を入れてこの問題に取り組むのであれば、日本国籍取得のサポートをより拡充すべきだ。
在日コリアンの方々に対しては外国人(一般永住者)として生きるのか、帰化して日本のフルメンバーになるのか、選択を迫ることになる。それでも、外国から見て明らかに不自然なこの制度は、やはり戦後70周年を節目として見直すべきだと考える。
※SAPIO2015年2月号