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スーパー専門誌編集長が明かす「4つの磁石売場のつくり方」

 業界紙、専門誌のめくるめく世界をあなたに──。今回は、日本で唯一のスーパーマーケット専門誌を紹介する。

『食品商業』(商業界)
創刊:1972年、『食品販売』として創刊。翌年『食品商業』に。
月刊誌:毎月15日発売
部数:10万1000部
読者層:スーパーマーケット業界にかかわるあらゆる人々
定価:1152円
購入方法:書店で購入するか、発行元に直接注文。

「スーパーマーケットの主な商品は食品ですから、比較的安定した需要があり、地域性もあるので、他の業界より競争環境は厳しくありませんでした。それがここ数年、コンビニが総菜に力を入れてきて、スーパーマーケットとの区別があいまいになり、お客がそちらに流れています。

 さらに最近ではアベノミクスの影響もあって、首都圏などではパート従業員の時給が1000円を超えることもザラ。だからといってそれらを価格にのせるわけにもいかず、経営者は四苦八苦。店同士の消耗戦になっていますね」

 と語るのは日本で唯一のスーパーマーケット業の専門誌、『食品商業』の竹下浩一郎編集長(39才)だ。そうしたなか、いかにして売り上げと利益をあげるか。「店舗に取材に行っていちばん聞かれるのは、そこ。それを詳細に紹介しているのが、本誌です」と編集長は胸を張る。

 例えば、12月号では、『実務特集 店づくり一丁目一番地 目で見る“磁石売場”のつくり方』と銘打って、アメリカのチェーン店や売り上げを伸ばしている千葉や神奈川の店を例に挙げ、特集を組んでいる。“磁石売場”とは、お客が自然と店を一周するよう、要所要所に魅力的な商品陳列をした売場のこと。

〈これが機能していれば、お客はそこに吸い寄せられ、店内を一巡してくれる。逆に不完全だと、お客は一部の売場に立ち寄るだけで、すぐにレジに向かってしまう〉と、同誌はその重要性を説く。“磁石”なるものは、大きく分けて4つあるという。

 1つ目は入り口を入ってすぐの主通路沿いで、ここに色鮮やかな花、果物を陳列する。そして奥深く歩を進めたところに山を作るべし、と勧める商品が、なんとバナナ。

〈バナナは、欧米社会でも日本と同様に客数が多い。大量陳列品だ。これ以上ない、とまでいえる強力な磁石効果を持つ〉そうだ。

 続いて、正面奥の角が第2磁石で、ここは〈客数が多く店全体の収益源として大事な〉精肉売場だ。

 その先の角には、第3の磁石として、アメリカではインストアベーカリー、つまりパン売場が設置されるが、日本のスーパーの多くは総菜コーナーを置くレイアウトが好まれるそうだ。

 とにかく、多くのお客は、店に入った時点では広い店内をくまなく歩くつもりはない。そのお客に最後まで陳列線を歩かせるにはどうするかを同誌は説く。

 第4磁石の設置が不可欠で、〈主通路に沿って歩いて行くと、チラシ掲載商品をうまく連動させながら磁石としての効果を引き出して〉とある。

 一歩進むごとに本日の目玉商品が次々と目に飛び込んできて、それを手にするうちに〈今晩のメニューの候補が頭に残る仕掛け〉というから恐れ入る。

 磁石売場について同誌は、〈言い換えれば、お客が売場を歩く際にどのくらいの頻度で感動を与えられるかということだ。ある店では10歩、またある店では15歩、20歩以上を要する店もあるかも知れない〉と綴る。

 また精肉ひとつ売るにも工夫が必要で、『均一セールで客単価アップ』を狙うのがよいという。

〈均一セールは周りの商品も同じ価格のため安く見える。そのため、客単価アップが比較的簡単に行えるのである。特に牛肉の均一セールは通常売価が高いため、パック当たり580円、980円、1280円でも安価に見えるのである〉

 客は店が仕掛けた磁石に吸い寄せられては前に進む、“買い物アドベンチャー・ゲーム”の参加者のような存在なのかもしれない。いつも行くスーパーマーケットを“買い物先”としてでなく、“経営”という向こう側から光をあてた記事は、「へえ、なるほど!」の連続で、読み始めたら、止まらなくなった。

 高レベルの経営効率を誇るというスーパー・ベルク。見どころ満載の同店の売場を徹底検証する大特集に、スーパー関係者の熱い視線が注がれた。

取材・文/野原広子

※女性セブン2015年1月29日号

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