京都市が、リサイクル可能な「雑がみ」の回収を進めるため、雑がみを家庭で保管できる専用の袋を作り、順次、市内の全世帯に配布するという。分別が有効に機能すれば、社会にとって大きなメリットがあるが、現実的にはなかなか理解が進まないもの。とりわけ、日本語に堪能でない外国人に関しては、ゴミにまつわるトラブルは少なくないが、外国人に正しいゴミの捨て方を指導するにはどうすればよいのだろう? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。
【相談】
町内の世話人をしています。最近、外国人専用のコーポが建築され、彼らのゴミの出し方がひどく困っています。指定日にゴミ集積所に出さず、分別もバラバラ。注意しようにも言葉が通じず、役所に相談しても真剣に取り合ってくれません。彼らに正しいゴミの捨て方を指導するいい方法はないでしょうか。
【回答】
ゴミは、役に立たない物ですから、廃棄物に当たり、廃棄物処理法が適用されます。そして、同法第16条では「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と不法投棄を禁止しています。
不法投棄は、五年以下の懲役、もしくは一千万円以下の罰金が科せられる重罪ですが、極端な場合を除き、家庭ゴミにまで適用されるのは稀です。当該外国人がゴミ出し日などを守らないものの、一応はゴミ集積所に出している点を考慮すると、いきなり廃棄物処理法違反として過酷な処罰を負わせることはできないでしょう。
他方、各自治体は地域の実情にそくした廃棄物処理に関する条例を定めており、住民の義務についても規定しています。例えば、住民は自治体のゴミ収集計画に従い、家庭ゴミを分別して、集積所に出すことや、集積所とその周辺を常に清潔に保つようにする責務があるとするような条例です。
その違反者に罰則を科している例は多くはありませんが、中には違反者に対して改善命令を出した上、五万円以下の罰金に処するとする条例もあります。念のため、条例を確認してみてください。他にも軽犯罪法では「公共の利益に反してみだりにゴミを棄てた者」を拘留、または科料で処罰できます。そこで、地元の自治体の条例に罰則規定などがなく、役所が動かない場合でも、ゴミ捨てがひどければ警察に相談してみるのも一手です。
ただし、日本の制度や慣習になじみが薄い外国人には、彼らの母国語でゴミ出し方法の掲示をするなどの配慮も必要です。この点、生活環境を守るべき役所が住民任せにして動かないことは残念です。集積所が民間の施設であっても、役所のゴミ収集計画に密接に関係しています。役所に対して、もっと積極的に関与するように協力を求めるべきだと思います。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2015年2月13日号