国際情報

「中国は琉球を大中華帝国の一部と考えている」との指摘あり

 勢力範囲を拡張せんとし、周辺各国と紛争を繰り返している中国。なぜ、彼らは横暴を続けるのか。中国が潜在的に自国領土と考えている範囲を見ると、彼らの行動原理が見えてくる。ジャーナリスト・惠谷治氏が指摘する。

 * * *
 古代中国の皇帝(天子)は周辺諸国の異民族支配者に対し、王号や官位を与え、その国の統治を認める代わりに、定期朝貢や臣礼遵守を義務づけた。
 
 この関係は冊封体制と呼ばれ、BC3世紀の秦代に成立し、19世紀の清朝末期まで続く東アジアの国際秩序となった。冊封関係において漢字が使用され、漢字を媒介として、儒教、律令制度、仏教が東アジアの共通文化となった。
 
 日本も6世紀までは冊封体制のなかにいたが、聖徳太子は隋との対等外交を目指し、607年に「日出る処の天子、書を日没する処の天子に致す」という国書を送り、冊封体制に入らないことを宣言した。しかし、両国の友好関係は維持され、遣隋使や遣唐使の派遣が続き、中国からも使節団が来日していた。
 
 冊封体制は、欧米列強によるアヘン戦争やアロー戦争などの侵略によって、19世紀末に崩壊した。
 
 しかし、冊封体制を支えた中華思想は消滅することなく、1920年に成立した中華民国(国民党政府)の国家イデオロギーとなった。大東亜戦争、国共内戦を経た後、国民党は中国共産党に敗れ、台湾に脱出した。
 
 1951年、国民党政府は『反共抗俄掛図』を作製した(俄はロシアの意味)。その地図には、清朝最大版図を連想させるような赤い境界線が引かれており、近隣のかつての冊封国を自国領と考える中華思想が明示されていた。
 
 1949年に誕生した中華人民共和国政府も、1953年に発行した教科書『現代中国簡史』において、中国の潜在的領土を示す境界線を引いた地図を紹介した。この境界線は国民党が描いた地図の境界線よりも拡大され、ビルマ、タイ、マレーシアなど東南アジア全域が含まれている。
 
 中国では共産党も国民党も、琉球(沖縄)は”大中華帝国”の一部と考えているものの、早々と冊封体制から離脱した日本は含まないという点で一致している。
 
 赤いライン内には、清朝時代に帝政ロシアに奪われたトゥヴァ(唐努烏梁海)、モンゴル、沿海州などが含まれており、スペインのレコンキスタ(再征服運動)やイタリアのイレデンティスモ(回収運動)を彷佛とさせる。

※SAPIO2015年3月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
《訃報》「生きづらさ感じる人に寄り添う」遠野なぎこさんが逝去、フリー転向で語っていた“病のリアルを伝えたい”真摯な思い
NEWSポストセブン
なぜ蓮舫氏は東京から再出馬しなかったのか
蓮舫氏の参院選「比例」出馬の背景に“女の戦い”か 東京選挙区・立民の塩村文夏氏は「お世話になっている。蓮舫さんに返ってきてほしい」
NEWSポストセブン
泉房穂氏(左)が「潜水艦作戦」をするのは立花孝志候補を避けるため?
参院選・泉房穂氏が異例の「潜水艦作戦」 NHK党・立花孝志氏の批判かわす狙い? 陣営スタッフは「違います」と回答「予定は事務所も完全に把握していない」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《真美子さんの艶やかな黒髪》レッドカーペット直前にヘアサロンで見せていた「モデルとしての表情」鏡を真剣に見つめて…【大谷翔平と手を繋いで登壇】
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《永瀬廉と浜辺美波のアツアツデート現場》「安く見積もっても5万円」「食べログ予約もできる」高級鉄板焼き屋で“丸ごと貸し切りディナー”
NEWSポストセブン
誕生日を迎えた大谷翔平と子連れ観戦する真美子夫人(写真左/AFLO、写真右/時事通信フォト)
《家族の応援が何よりのプレゼント》大谷翔平のバースデー登板を真美子夫人が子連れ観戦、試合後は即帰宅せず球場で家族水入らずの時間を満喫
女性セブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《永瀬廉と全身黒のリンクコーデデート》浜辺美波、プライベートで見せていた“ダル着私服のギャップ”「2万7500円のジャージ風ジャケット、足元はリカバリーサンダル」
NEWSポストセブン
6月13日、航空会社『エア・インディア』の旅客機が墜落し乗客1名を除いた241名が死亡した(時事通信フォト/Xより)
《エア・インディア墜落の原因は》「なぜスイッチをオフにした?」調査報告書で明かされた事故直前の“パイロットの会話”と機長が抱えていた“精神衛生上の問題”【260名が死亡】
NEWSポストセブン
亡くなった三浦春馬さんと「みたままつり」の提灯
《三浦春馬が今年も靖国に》『永遠の0』から続く縁…“春友”が灯す数多くの提灯と広がる思い「生きた証を風化させない」
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《タクシーで自宅マンションへ》永瀬廉と浜辺美波“ノーマスク”で見えた信頼感「追いかけたい」「知性を感じたい」…合致する恋愛観
NEWSポストセブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《産後とは思えない》真美子さん「背中がざっくり開いたドレスの着こなし」は努力の賜物…目撃されていた「白パーカー私服での外出姿」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン