「動物に癒される」と老後にペットを飼い始めるシニアが増えている。しかし、面倒を見きれずに、周囲に迷惑をかけてしまうことがある。福岡県在住の主婦・伊藤きみ子さん(仮名・51才)の話。
「わが家の隣に小さな児童公園があり、そこで野良猫にエサをやるおばあさんがいるんです。毎日午前中にやってきて、地面に食べ物を広げる。そしてそのまま置き去りにするので食べ残しが腐ってしまい、すごく臭いんです。子供の遊び場ですから、間違って子供が口に入れてしまうかもしれないでしょう。そして集まってくる猫たちは公園にそのまま居座るようになり、あちこちでウンチやおしっこをする。春になるとさかりがついて、ギャーギャーと昼夜問わず鳴いていてうるさくてしかたありません」
きみ子さんは通りがかりに、「毎日ご苦労様です~」と嫌みを込めて声をかけたが、その思いは相手には全く伝わっていない。
「『かわいいでしょう、この子たち。連れて帰ってもいいのだけれど、猫は自由が好きだから家の中に閉じ込めちゃうのはかわいそうで。私もその方が楽だから』と言うんです。ペットにしたいのだったら、ちゃんと自分の家で飼ってもらわないと本当に迷惑です」
相次ぐペットトラブルについて、「ペットトラブル110番」を運営する行政書士の福本健一さんが指摘する。
「室内でペットを飼うかたが増え、かみつく、糞尿を隣家にまき散らすといったようなトラブルは以前に比べて減っています。しかし、高齢の飼い主が増えたことで新たな問題が勃発している。面倒を見られず捨ててしまった犬や猫が野良になってしまったり、体力がなく散歩のときに引っ張られて転んでしまうといったケースです」
まさにそうしたトラブルに巻き込まれたのは静岡県に住む52才の主婦、古川三奈子さん(仮名)だ。三奈子さんはスカイと名づけたミニチュアダックスフントを飼っている。
「スカイの日課は毎朝の散歩です。ある朝、散歩していると反対側からコーギーを連れたご近所のおばあちゃんが歩いてきました。軽く挨拶をしてすれ違った直後、ブロローと大きな音を立ててバイクが横を通り過ぎました。するとコーギーがびっくりしたのか、おばあちゃんの持つリードをぐいっと引っ張ってこちら側に突進。
スカイのお腹にバグっとかみついたんです。幸いにも大きなけがではありませんでしたが、ストレスからか脱毛症になってしまってとてもかわいそうで…。ご近所づきあいもあるし、3万円近い治療費を請求することもできずモヤモヤしています」
トラブルの加害者にならないため、また被害を受けてもコトを荒立てずに済ませるためにはどうしたらよいのか。
「当然のことですが、飼い主はペットをしつけて最低限のマナーを守る必要があります。自分は動物が好きでも周囲にはあまり好きではない人がいるかもしれない。些細なことにも気を配らなければいけません。また、被害を受けているかたは苦情を飼い主に直接伝えるのは避けたほうがいいでしょう。マンションなら管理会社、持家なら近所の人と相談するか町内会を通すことをおすすめします」(福本さん)
※女性セブン2015年3月12日号