なぜ女性社長61歳は、こんなクズ連中を雇ったのだろう。容疑者36歳は昨年2月、26歳は2012年9月、29歳は同年8月に〈パートとして採用され、現在は正社員として勤務していた〉と読売新聞にある。どうしてクズ連中が正社員登用されるのか。「ケアホームひまわり」はいったいどういう職場なのか。
ネット上に、ふだんの(事件前の)「ケアホームひまわり」が分かるような情報がほとんどない。中日新聞によると、この施設には〈50~90代の27人が入所。実態は老人福祉法の有料老人ホームだが、届け出をしていなかったという〉とのこと。つまり、いわゆる“無届け老人ホーム”なわけだ。
一軒家や老朽マンションなどで高齢者が介護を受けながら暮らす“無届け老人ホーム”の実態は掴みきれていないが、ここ数年で急増していることは間違いない。厚生労働省の昨年秋の調査では、全国で961の無届け施設があったという。実態はもっと多いといわれている。
“無届け老人ホーム”の中には、先端的な介護を提供するハイレベルな施設などもある。が、その大半は、介護の質を保証するための規制から外れたプアな住環境や介護サービス体制で、そのぶん割安な利用料で入居できることをウリにするものだ。安かろう悪かろうで、行政指導も入らない。だから、どんな施設なのか、ネット上でも具体的な情報に乏しい施設が多い。
「ケアホームひまわり」もそんな典型だから情報がないのだが、いろいろ検索していたら、1ページだけ見つけた。大手求人情報サイトに最近まで掲載されていたと思われる「有限会社介護グループひまわり」の求人広告が、キャッシュで閲覧できたのだ。介護スタッフの正社員募集。条件は以下の通り。
・対象となる方:学歴不問、未経験者OK
・勤務時間:6:00~15:30、10:30~20:00 夜勤なし・交替制
・給与:月給22万3000円以上 試用期間6ヶ月あり
・休日休暇:4週8休制
・待遇・福利厚生:昇給年1回、賞与年2回、資格手当、交通費規定支給、雇用・労災保険、有給休暇
想像と違った。半ば闇でやっているような“無届け老人ホーム”だから、働く場所としても相当ブラックだろうと思ったのだが、この求人広告通りならば、そうでもなさそうだ。夜勤なし、4週8休で、月給22万3000円以上という介護職員の条件は、同じ愛知県内の同業種のものと比べて結構いい。企業情報の〈ひまわりの紹介〉という欄には、こんなことが書かれている。
〈社長1人、施設長1人、スタッフ13人。みんな気さくで明るいメンバーばかりです。20代~50代の男女が活躍中です!当社では、ご入居者様だけでなく、スタッフ用の食事も作っており、健康に配慮したバランスの良い食事を提供しています。独身スタッフや育児で忙しい主婦層にも好評です☆〉
職員と入居者がVサインやガッツポーズをしている写真もある。この求人広告を見る限りではアットホームだ。働きやすそうなのだ。“無届け”で利益の生みやすい商売をしているから、わりと金があり、雇用面は人寄せ優先でゆるくやっている。ゆえに人間のクズも紛れ込む。そんな感じだろうか……。
“無届け老人ホーム”には、金も家族の支援もないからそこに回されてきた、という入居者が圧倒的に多い。他に行き場のない高齢者がかき集められる。この国の介護福祉は、すでにここまで朽ちている。