実は両者は、プロ入り以前に邂逅を果たしている。西本が高校2年の時、栃木に遠征し、練習試合で江川と投げ合った。試合は松山商が江川の前に16三振、完封負けを喫した。
「こんな高校生がいるのかと思った。打席ではボールが浮き上がってきましたからね。今思うと、人生に偶然はなく、起こるべくして起こった出会いだったのでしょう」(西本)
それから7年後の1979年、2人は同じユニフォームを着ることになる。
「最初に江川さんが巨人に入ると聞いたときは“来るな!”と思いましたよ。僕はようやくローテーション入りを掴みかけていた時期でしたから」(西本)
この年、5年目の西本は8勝。“ルーキー”の江川は「江川事件」の制裁のため6月の遅れたデビューになったが、いきなり9勝を挙げた。これが西本の心に火をつけないわけはなく、冒頭の伊東キャンプでの投げ合いに繋がるのである。
江川と西本、両者のライバル関係には、まだまだ物語がある。詳細は現在『ビックコミックスペリオール』(小学館)に連載中の漫画『江川と西本』(森高夕次・星野泰視。第1巻発売中)に描かれている。
(文中敬称略)
※週刊ポスト2015年5月8・15日号