〈高校卒業後、航空自衛隊に入り、県外の基地に配属されたが、辞めて実家に戻った。数年前、県内に事業所がある大手メーカーに就職〉(朝日新聞、4月26日付)、〈航空自衛隊に入隊したが、「訓練が厳しい」と数年で辞めた〉(読売新聞、同)、〈高校卒業後、航空自衛官や警備会社、キノコ栽培、部品メーカーなど職を転々としていた〉(毎日新聞、4月28日付)
記事の見出しではやはり〈ブログに「ローンウルフ」容疑者、反原発に傾倒〉(読売新聞、4月26日付)、〈「世に不満、会社辞め準備」官邸ドローン容疑者、孤立深め犯行?〉(産経新聞、同28日付)と、総じて職を失った“反原発主義者”の犯行であることが強調されている。
そうした報道が垂れ流された結果、犯行の全容を読み解く上で重要な部分が抜け落ちてしまった。前出・五野井氏がいう。
「ネットなどでは犯人が極左や左翼だといわれていますが、それは違うでしょう。ブログでは〈参考書〉として古賀茂明やチェ・ゲバラの著作を取り上げる一方で、『マンガ嫌韓流』を描いた山野車輪の著作も挙げている。そんな左翼はいません。
特定のイデオロギーがあるわけではなく、権力の腐敗や不正が嫌いで、ある種の義憤を持っている人物ではないでしょうか。そもそも『原発反対だから左派、極左』という言説が罷り通っていることがおかしい」
※週刊ポスト2015年5月22日号