「最大の理由は薬が『効きすぎる』ことです。口から飲んだ薬は胃で溶けて腸で吸収される。その後は肝臓で分解され、腎臓から体外に排出されます。歳をとると肝臓や腎臓の機能が低下するため、薬効が強く、かつ長く出てしまうのです。

 また、歳をとるほど体脂肪率が高くなる。神経などに作用する薬は脂溶性のものが多い。文字通り脂に溶ける薬です。そうした薬の成分が体内に残りやすくなります」

 日本老年医学会が警鐘を鳴らす背景には、加齢による体質変化に加え、日本の高齢者が薬を処方されすぎるという事情がある。いわゆる「多剤併用」の弊害について、高齢者の総合診療に詳しい医師・徳田安春氏(地域医療機能推進機構顧問)が解説する。

「国民皆保険の日本では、ちょっとしたことでも病院に行きがちで、高齢者ほどその傾向が強くなります。また、異常を感じた部位ごとに違う医師にかかることが多く、それぞれから薬を処方される。そうした環境が多剤併用を生む。

 海外では早くから多剤併用が問題視され、アメリカでは1991年にマイアミ大医学部教授のマーク・ビアーズ氏が高齢者に不適切な薬のリストを発表し、改訂を重ねながら、『ビアーズ基準』として定着しています。日本でも遅ればせながらそうした議論が出てきたということです」

※週刊ポスト2015年5月22日号

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