そこで、王に大きな転機が訪れる。西崗区内の老朽化した国有アパートが払い下げになり、その赤字を補填すれば、アパートの経営権を手にすることができるという情報をいち早く入手。軍隊時代の仲間から資金を募り、不動産経営に乗り出したのだ。
王は1989年、西崗区住宅開発会社の総経理(社長)に就任し、アパートを取り壊して高級マンションを建設。会社も大連万達集団と改組し、いまも同グループは王のビジネスの中核となっている。
これを皮切りに、王はビジネスを拡大し、2002年に吉林省長春市にグループで最初のショッピングモールを建設。同グループのホームページによると、それ以来、中国全土で109か所の大規模ショッピングモールをてがけ、69の五つ星ホテルを含む71軒のホテルを建設、計6600のスクリーンを持つ複合型映画館(シネマコンプレックス)や99軒のデパートを完成させた。
現在では 米シカゴに9億ドル(約1080億円)を投じ89階建て高層ビルを建設し、自社ブランドの「ワンダ・ホテル」などが入居。これは米国での初の大型不動産投資で、2018年に開業予定。英ロンドン、スペインのマドリードでも自社ホテル建設に着手するなど、王は「2020年までに世界の主要12~15都市にワンダの五つ星ホテルを開き、国際的な影響力を持つ中国のホテルブランドをつくる」とその野望を隠さない。
さらに、米2位の映画館チェーンAMCを買収し、山東省青島市に80億ドルを投じて撮影所や映画セットなどを含む一大映画センターを建設し、お披露目の記者会見にはレオナルド・ディカプリオやニコール・キッドマン、ジョン・トラボルタらを招待するなど、その派手なパフォーマンスで人々の度肝を抜いた。
※SAPIO2015年7月号