今の時代劇を観てると悲しくなるよな。俺が『必殺』を嫌になったのは、みんながキレイキレイになってきたからだよ。やっぱり陰に隠れて殺さないと。それが最近じゃあ『桃太郎侍』みたいに、最後に刀を振り回すようになってきてるからね。

 やっぱり、その時代に合ったアウトローのヒーローを作らなきゃダメだよ。そういう作品があるんだったら、いくらでも俺はお手伝いするけどな。できないはずはないと思うんだ。やりたい。もう俺の時代じゃないから手伝いしかできないかもしれないけど、新しいヒーローを作るためだったら、俺はいくらでもするし、やりたい。また『わあ、時代劇って面白いな』と言われたいしな。

 今はとにかく情緒がないわ。時代劇って、やっぱり情緒があって、観ている人がクスンと泣いたり、クスッと笑ったり、そういうのをまたやりたいよな。前は情緒を分かるスタッフたちがいて、みんなで面白がって作っていた。こっちが何か考えると向こうは『やったろか』『これで参ったか!』と応えてくる。そういうことで面白くしていったように思うんだ。

 今のテレビは、腰を落ちつけられないんだ。昔は最低でも26本撮ろうとかでやっていたんだ。半年やれば、いいものはいい、ダメなものはダメと分かってくるもんさ。でも今は10本だけとか、それも視聴率を気にして打ち切りにしたりとか。それだとやっぱり難しいよ。ある意味では哀しい時代だよね」

■春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(ともに文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

※週刊ポスト2015年7月3日号

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