国内

働き盛りの40~50代による「介護離職」10万人時代が到来した

世の中に存在する様々な「数字」。政府や役所が発表する「数字」。これらを鵜呑みにして良いものなのだろうか……。こうした「数字」を元に、様々な問題点について、元経済産業省官僚でNPO法人社会保障経済研究所代表の石川和男氏が解説する連載「もの言う数字」。第二回は介護に関する「数字」についてだ。

 * * *
 日本は今、長寿社会。将来はもっと長寿社会。子どもの数はもっと少なくなる。これが少子高齢社会。高齢者が増えれば、「介護」の世話になる人が増えていく。先ず親を介護する側に立ち、次に自分が介護される側に立つ。そういう人がこれから増えていく。

 親に介護が必要となった場合、自分に介護が必要となった場合、どのような介護を望むのか?
 
 厚生労働省によると、【1】親に介護が必要になった場合の家族としての希望、と【2】自分に介護が必要になった場合の本人としての希望は、それぞれ次のような結果になった。

【1】家族としての希望では、「自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けさせたい」が49%、「家族に依存せずに生活できるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けさせたい」が27%。

【2】本人としての希望では、「家族に依存せずに生活できるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けたい」が46%、「自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けたい」が24%。

「介護」にはいろいろな種類がある。特別養護老人ホームや老健施設に入所して住むような「施設系」もあれば、近所のデイサービスに通ったり、自宅で訪問介護を受ける「在宅系」もある。上記の厚労省調査からすると、施設系介護よりも在宅系介護のほうに多くのニーズがある。

 介護される本人も、介護を頼む家族も、「自宅で家族中心に介護を受けたい・受けさせたい」が少ないのは意外だと思う人は多いかもしれない。家族が介護するのは無償サービス、外部の人が介護するのは有償サービス。介護する側も、介護される側も、外部の人による有償サービスが望ましいと思っている。

 自分に置き換えて考えてみる。なるほどその通りかもしれない。親の介護のために仕事に就けない、仕事を辞めなければならない――「介護離職」はだんだん社会問題化しつつある。子どもが年老いた親の面倒を見るのは当然だが、面倒を見る方法はよくよく考えないといけない。

 介護をしながら働いている人は全国で290万人。そして、介護離職をする人は年間10万人にもなる。その多くは、40~50代の働き盛りの人たち。

 介護保険制度というものがある。これは、自分の家族の介護を、自分するのではなく、介護のプロに任せるというのが趣旨。つまり、介護を『他人任せ』にすることで、働き盛りの現役世代の人々を介護離職に追い込まないためのもの。

 これから少子高齢化でますます労働力不足社会になっていく日本は、『介護離職ゼロ化』や『介護休業ゼロ化』を目指す必要がある。企業にとって必要な人材の介護離職や介護休業をゼロ化することは、企業活動の維持にもなる。

 自分が年老いた時、子どもの近くで生きていたいと思うし、子どもの近くで死にたいとも思う。でも、年老いた自分の面倒を働き盛りの子どもに見させるのは、子どもの仕事も生活も人生も奪うことになりはしないか。やはり、子どもには自分の人生を謳歌してもらいたい。今の自分がそうであるように。

文/石川和男

関連キーワード

関連記事

トピックス

盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
モサドの次なる標的とは(右はモサド長官のダビデ・バルネア氏、左はネタニヤフ首相/共同通信社)
イスラエルの対イラン「ライジング・ライオン作戦」を成功させた“世界最強諜報機関”モサドのベールに包まれた業務 イラン防諜部隊のトップ以下20人を二重スパイにした実績も
週刊ポスト
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
事件の“断末魔”、殴打された痕跡、部屋中に血痕…“自慢の恋人”東川千愛礼さん(19)を襲った安藤陸人容疑者の「強烈な殺意」【豊田市19歳刺殺事件】
NEWSポストセブン