自宅をリフォームするテレビ番組『大改造!!劇的ビフォーアフター』(テレビ朝日系)は、今年で放送開始14年目を迎える大人気長寿番組となっているが、世の中には悪辣なリフォーム業者も存在するようだ。年老いた母がリフォーム業者とトラブルになった場合、どう対処すればよいのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。
【相談】
実家の雨漏りがひどいので、母が屋根をリフォーム。しかし、請求書には頼んでいない玄関のドアの付け替え費用も含まれていたそうです。付け替えはサービスだと業者がいったから頼んだと母は言い張り、先方はそちらが依頼してきたと譲りません。こういう場合、業者の請求書に従い支払うべきですか。
【回答】
どのような業者に頼んだのでしょうか。普段から出入りしている近所の大工さんではなく、飛び込みでやってきた業者だとすると、特定商取引法の適用があります。
特定商取引法は、自宅を訪問して、そこで契約の締結を受けることを訪問販売として規制していますが、その中には「役務提供」の契約も含まれており、屋根リフォーム工事も役務提供契約だからです。
そして、特定商取引法では、業者は契約の申し込みを受けたときには法の定める一定の事項を記載した文書(法定書面)を交付する義務があります。そこには役務の種類を記載することになっていますが、工事の場合だと、その特定ができるように工事の場所と種類を書いておく必要があります。
そこでまず、法定書面の有無と内容を確認してください。ドア工事が含まれていなければ、サービスというお母さんの言い分も通用します。また、法定書面がなければ、クーリングオフも検討できますし、業者は行政指導の対象ともなります。
もし、書面にドア付け替え工事も含まれているとすれば、お母さんは見逃していたことになりますが、業者から説明しましたと反論されると厄介です。例えば、取り替えた元のドアに傷や故障がなく、取り替える必要がなかったことなどを証明して、業者の言い分の不合理性を追及し、交渉するしかないと思います。
お母さんが高齢で、判断力や注意力が弱っている場合、特定商取引法は事業者が「老人その他の者の判断力の不足に乗じ、訪問販売に係る」役務提供契約を締結させると、行政上の指導や監督を受けることになっています。そこで支払う前に、お母さんから事情をよく確認した上、業者から交付を受けた書面等を持参して、消費者センターに相談に行かれるのがよいでしょう。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2015年7月31日号