映画「731」のポスターと、中国黒竜江省ハルビン市郊外の731部隊跡地に設置された石碑(時事通信フォト)
〈涙が止まらず、しばらく立てなかった〉〈日本と手を取り合うことはできない〉──8月、中国のSNSにはこんなコメントが多数投稿された。
8月15日、先の大戦の終戦から80年を迎えた。日本の新聞やテレビなど報道機関は、同じ過ちを繰り返さないようさまざまな企画や記事で、当時を知る高齢者の証言などを紹介している。一方の中国は「抗日戦争勝利80年」として、国威発揚につなげるべく宣伝を強化。そのひとつが3本の“反日”映画だ。
大手紙国際部記者はこう解説する。
「毎年、この時期は反日感情が高まりますが、80年という区切りの今年は特にすごいです。
7月下旬に、1939年に発生した旧日本軍による南京事件について扱った映画『南京写真館』が公開されると、興行収入はあっという間に23億元(約470億円)を超え、今夏一番の大ヒットとなっています。残虐な内容に対して慎重な声もありましたが、国営新華社通信は『この映画を見た5歳の女の子が大きくなったら軍に入ると発言した』などと報じており、愛国心の高揚に利用されています」
この映画の舞台は、旧日本軍の占領下だった南京にある写真館。旧日本軍による“虐殺”の証拠となるネガフィルムを、写真館で働く中国人が命がけで守るといったストーリーだ。
物語性もあるが、「残虐なシーンが殊更に強調されている」という。