ただ、民主党が対案を出していないじゃないかという批判もありますが、明確に反対を打ち出して安保法案の問題点をえぐり出していくことには、成功したかなと思っているんです。これだけ政権の支持率が下がっているし、おかしいという共通認識が広がったということはいえると思います。
私は役所で働いていたこともあって、政策を作るのは好きです。しかし、政策だけやりたいなら役人をやっていればよかった。政治の役割はそれだけではありません。最近は白黒はっきりつける政治文化になりましたが、ただ、現実社会はどっちも正しい、あるいはどっちも間違っているというのがほとんどです。それを全部呑み込んだ上で、折り合いを付けていくことが政治の作業です。
だから、安保においても、法的安定性への対処と現実性への対処は時にぶつかるし、法的安定性にだけこだわっていたら現実に対応できないということも否定しません。しかし、この両者をなんとか両立させていかなくてはならないという苦悩みたいなものが安倍政権からは感じられないということが問題なんです」
聞き手・藤本順一(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2015年8月21・28日号