「根元に藁を敷いて土の温度や蒸れを調節したり、風で倒れないように強弱をつけてロープを張ったり、枝の中まで陽が届くように茂りすぎた葉は剪定したり、水やりも日によって加減したり…。手をかけたものは見た目も味も違います」
と語るのは、京野菜をつくる海老瀬正春さん。
京都市北部の京北地区、森林に囲まれた山あいに海老瀬さんの畑はある。寒暖の差が大きい自然環境も手伝って、上質な伏見とうがらしが育つのだ。
旬は7~9月。5月に植えた苗の収穫は6月中旬から始まり、11月の霜が降りる頃まで可能という。
伏見とうがらしは京の伝統野菜のひとつ。辛みがなく、独特な風味と甘さを持つことから伏見甘長(ふしみあまなが)とも呼ばれ、京都ではおばんさいの一品としてよく食べられてきた。
JA京都京北支店の中川俊さんも大好物だと語る。
「初めて食べたのは小学2年の頃。遊びに行った友達の家で、おばあちゃんが炭火で焼いていた。『あんたも食べえ』とすすめられて食べたら、おいしくて、おいしくて止まらなくなった。遊びも忘れて夢中で食べた味は、今でも覚えています」
「わが子のように丹精込めた自信作です」と、海老瀬さんが枝からもぎ取った1本は、真っ直ぐでつやのある緑色がきれいだった。
大切に育てられた伏見とうがらしを、暑い夏にこそ味わい深く食べる方法を京都の老舗料亭『美濃吉本店竹茂楼』調理総支配人の佐竹洋治さんに教えてもらった。
『伏見とうがらしとじゃこの炊き合わせ トマト添え』作り方 ※材料は4人分
【1】フライパンに太白胡麻油少量を入れて温め、へたを取って食べやすい大きさに切った伏見とうがらし200gを加えて炒める。油がなじんだら、さらに太白胡麻油を入れて表面の色が変わるまでしっかりと火を通す。
【2】【1】に、ちりめんじゃこ50gと合わせ調味料(だし100cc、濃口しょうゆ・みりん各20cc)を入れて絡ませ、冷ましておく。冷めたら、濃口しょうゆ味で味を調える。
【3】トマト1個は湯むきしてひと口大に切り、マリネ液(酢30cc、砂糖大さじ1、塩・こしょう各少量、太白胡麻油大さじ1、薄口しょうゆ小さじ1)に漬け、冷蔵庫で約10分冷やす。
【4】器に【3】を盛り、【2】を盛り付ける。
※女性セブン2015年9月3日号