国際情報

中国不動産市場の崩壊を象徴するゴーストタウン・鬼城を歩く

内モンゴル・オルドス市のゴーストタウン

 これまで供給過多だった中国不動産市場の崩壊を、最も象徴するのが、街のゴーストタウン化である。中国語で「鬼城(グイチェン)」と呼ぶこの現象は、もはや覆い隠すことのできない病症として、中国のそこかしこで見られる。ノンフィクションライター・安田峰俊氏が現地をレポートする。

 * * *
 地平線の果てまで人影ひとつない荒野を貫く、1本の高速道路。やがて小さな丘を越えた先に、場違いな高層建築の群れがいきなり現れた。

 市内に入る。雲ひとつない晴天の下、マンション群が無人の道路に影を伸ばす。居住者の気配はない。シャッターを閉めた店舗も多い。人工物だらけの空間なのに、周囲の草原と変わらない静寂だけが街を支配していた。

 ここは北京の北西300kmに位置する、内モンゴル自治区ウランチャブ市集寧新区。往年は遊牧民の楽園だったこの場所は、近年不名誉な形で注目を集めつつある。すなわち、街の「鬼城」化だ。

 車両もまばらな八車線道路を通り、市政府へ向かう。10階建ての庁舎は敷地面積13万平方m、職員1万2000人を収容可能だ。一昨年秋の完成当初、都市規模に見合わないと批判が殺到した建物である。

 庁舎の南には広大な公園と、三角形を組み合わせた珍妙な形の市営体育館が位置する。「緑化」のつもりか、周囲一面に緑色のソフトマットが敷き詰められていた。

「許可の無い者は入るな!」

 体育館に入ると警備員に怒鳴られた。施設は稼働中のはずだが、市民の利用を想定していないのだろうか? 隣接する真新しい市営博物館も、やはり長期の休業中だ。

 街には大量の「爛尾楼(建築中に放棄された幽霊ビル)」も目につく。鉄骨をむき出しにした数十階建てのマンションや高級ホテルが、無残な姿を晒していた。

「2010年に就任した市のトップ・王学豊氏の責任でしょう。彼は3年間で70万人の人口増を見込み、610万平方kmの宅地造成を計画。農地を1畝(667平方m相当)あたり数千~1万元(約20万円)の廉価で接収して投資を募り、開発を進めました」

 案内してくれたモンゴル族の企業家、バルス氏(仮名)は話す。だが、田舎町のウランチャブ市は住民流出が激しく、人口は3年間でむしろ減少した。投資熱は去り、建設現場での給料遅配の頻発から労働者も逃亡。現在の光景が出来上がった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

山下市郎容疑者(41)が犯行の理由としている”メッセージの内容”とはどんなものだったのか──
「『包丁持ってこい、ぶっ殺してやる!』と…」山下市郎容疑者が見せたガールズバー店員・伊藤凛さんへの”激しい憤り“と、“バー出禁事件”「キレて暴れて女の子に暴言」【浜松市2人刺殺】
NEWSポストセブン
WEST.中間淳太(37)に熱愛が発覚、お相手は“バスり”ダンスお姉さんだ
《熱愛ツーショット》WEST.中間淳太(37)に“激バズダンスお姉さん”が向けた“恋するさわやか笑顔”「ほぼ同棲状態でもファンを気遣い時間差デート」
NEWSポストセブン
アパートで”要注意人物”扱いだった山下市郎容疑者(41)。男が起こした”暴力沙汰”とは──
《オラオラB系服にビッシリ入れ墨 》「『オマエが避けろよ!』と首根っこを…」“トラブルメーカー”だった山下市郎容疑者が起こした“暴力トラブル”【浜松市ガールズバー店員刺殺事件】
NEWSポストセブン
4月は甲斐拓也(左)を評価していた阿部慎之助監督だが…
《巨人・阿部監督を悩ませる正捕手問題》15億円で獲得した甲斐拓也の出番減少、投手陣は相次いで他の捕手への絶賛 達川光男氏は「甲斐は繊細なんですよね」と現状分析
週刊ポスト
事件に巻き込まれた竹内朋香さん(27)の夫が取材に思いを明かした
【独自】「死んだら終わりなんだよ!」「妻が殺される理由なんてない」“両手ナイフ男”に襲われたガールズバー店長・竹内朋香さんの夫が怒りの告白「容疑者と飲んだこともあるよ」
NEWSポストセブン
WEST.中間淳太(37)に熱愛が発覚、お相手は“バスり”ダンスお姉さんだ(右・Instagramより)
《スクープ》“夢の国のジュンタ”に熱愛発覚! WEST.中間淳太(37)が“激バズダンスお姉さん”と育む真剣交際「“第2の故郷”台湾へも旅行」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《左耳に2つのピアスが》地元メディアが「真美子さん」のディープフェイク映像を公開、大谷は「妻の露出に気を使う」スタンス…関係者は「驚きました」
NEWSポストセブン
防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
「服のはだけた女性がビクビクと痙攣して…」防犯カメラが捉えた“両手ナイフ男”の逮捕劇と、〈浜松一飲めるガールズバー〉から失われた日常【浜松市ガールズバー店員刺殺】
NEWSポストセブン
和久井学被告と、当時25歳だった元キャバクラ店経営者の女性・Aさん
【新宿タワマン殺人・初公判】「オフ会でBBQ、2人でお台場デートにも…」和久井学被告の弁護人が主張した25歳被害女性の「振る舞い」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト