「王学豊氏はオルドス市の幹部から栄転した人物。同市が2000年代に急成長した手法を真似たのです。前政権の胡錦濤時代は、地域のGDP増加が出世の評価基準でしたからね」(同)
当時、出世目的の公共事業や宅地開発は各地で見られ、「面子工程」と呼ばれた。同市の例のように、地方政府は安価で購入した農地を不動産開発に回す形でその財源を捻出した。
各地の地価が高騰していた当時、マンションは建てるほどカネになる魔法の箱だった。むろん、その部屋は投資物件となるため、実際に人間が住むことはほとんどない。
だが、2012年ごろから中国経済は徐々に停滞し、この歪んだ錬金術も崩壊する。結果、地方都市の不動産は塩漬けとなり、幽霊ビルや箱モノ行政施設だけが残った。
街の鬼城化は内モンゴルで際立って深刻だ。2013年、中国紙が発表した「鬼城12都市」(*注)には、オルドス市、清水河県、バヤンノール市、エレンホト市など4都市が登場。他にもウランチャブ市や区都のフフホト市新城区など、該当する場所は多い。
【*注/*広東省の週刊経済新聞『時代週報』2013年7月18日記事。内モンゴル自治区のほか、「河南省」鄭州市鄭東新区、鶴壁市、信陽市、「遼寧省」営口市、「江蘇省」常州市、鎮江市丹徒区、「湖北省」十堰市、「雲南省」昆明市呈貢区の「鬼城化」が言及されている】
前出のバルス氏は話す。
「内モンゴルは辺境ゆえに中央政府の目が届きにくい。また、石炭や天然ガス・レアアースなど地下資源が豊富で、中国本土とは比較にならないほど広大な『空き地』もある。投機マネーが集中しやすい環境が揃っていたんです」
※SAPIO2015年10月号