国際情報

中国の株売却禁止に識者「資本主義国の常識ではあり得ない」

 7月に続き、8月下旬にも暴落した中国の株式市場が、世界のマーケットに大きな動揺を与えている。中国は株式市場をなんとか軟着陸させようと必死だが、人類が経験したこともないような大暴落は避けられそうにない。投資銀行家として知られる「ぐっちーさん」こと山口正洋氏が解説する。

 * * *
 グローバル展開する企業なら「中国リスク」がいつか顕在化することを薄々わかっていたはずですが、それがいよいよはっきりしてきました。

 中国の株式市況を代表する「上海総合指数」は今年6月12日までの1年間で約2.5倍に膨れましたが、その後、7月初旬までのわずか2週間で3割以上も暴落しました。とくに7月8日は午前中だけで指数が7%近くも急落。世界の市場が緊張しました。

 これに対し、中国証券監督管理委員会は「持ち株が5%以上の大株主は向こう6か月間の売却禁止」「空売り禁止」といったなりふり構わぬ株価維持策を打ち出しました。さらには値下がりしそうな株式の取引停止を可能にし、一時は上場企業の約半分が取引できない異常事態となりました。それでも7月下旬には再び下落基調に転じ、7月28日には再び1日で8%以上も急落、8月24日にも8%以上の下げを演じました。

「株の売却禁止」といった市場原理を無視したやり方は、米国や日本をはじめ資本主義国の常識ではあり得ません。中国は市場のタブーを平気でやってのけたのです。

 米国のルー財務長官が「中国の介入に、深刻な疑問を持っている」と警告を発したように、海外からも中国の市場介入には疑問の声が挙がっています。

 しかし、中国は共産党一党独裁の国です。不動産も会社も、そもそもは国のもの。市場のルールはいつでも政府が変えられるわけです。投資家は、そんな“砂上の楼閣”で取引している。そう考えると、当局による介入は当然と言えば当然です。私もかつて中国でビジネスしてきたのでよくわかりますが、あらゆるルールが共産党の独断で決められています。野球で言えばストライクゾーンを自分たちの都合で勝手に動かすようなものです。

 それが株式市場でも現実になったのですから、中国に投資する外国人投資家が資金を引き上げるのはもちろん、市場の約8割を占める中国の個人投資家たちも逃げ出そうとしています。

※SAPIO2015年10月号

関連キーワード

トピックス

逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン
マッチングアプリぼったくり。押収されたトランプやメニュー表など。2025年5月15日、東京都渋谷区(時事通信フォト)
《あまりに悪質》障害者向けマッチングアプリを悪用した組織的ぼったくりの手口、女性がターゲットをお店に誘い出し…高齢者を狙い撃ちする風俗業者も
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下の「慰霊の旅」に同行された愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、皇室とご自身の将来との間で板挟み「皇室と距離ができればこうした仕打ちがある」という前例になった眞子さんの結婚 将来の選択肢を“せばめようとする外圧”も 
女性セブン
“じゃないほう”だった男の挑戦はまだまだ続く
「いつか紅白で『白い雲のように』を歌いたい」元猿岩石・森脇和成が語る有吉弘行との「最近の関係性」
NEWSポストセブン
「ピットブル」による咬傷事故が相次いでいる(左・米軍住宅参考画像)
《沖縄で相次ぐピットブル事件》「チェーンを噛みちぎって引きずった痕も…」自治体が狂犬病の予防接種すら把握できない“特殊事情”「米軍関係者の飼い犬だった」 
NEWSポストセブン
白鵬の活動を支えるスポンサー企業は多いと思われたが…
白鵬「世界相撲グランドスラム」構想でトヨタ以外の巨大スポンサー離反の危機か? “白鵬杯”スポンサー筆頭格SANKYOは「会見報道を見て知った。寝耳に水です」
週刊ポスト
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルの飛行機でスヤスヤ》佳子さまの“寝顔動画”が拡散…「エコノミークラス」に乗った切実な事情
NEWSポストセブン
6月13日、航空会社『エア・インディア』の旅客機が墜落し乗客1名を除いた241名が死亡した(時事通信フォト/Xより)
《エア・インディア墜落事故》「ボタンが反応しない」「エアコンが起動しない」…“機内映像”で捉えられていた“異変”【乗客1名除く241名死亡】
NEWSポストセブン
ロスで暴動が広がっている(FreedomNews.TvのYouTubeより)
《大谷翔平の壁画前でデモ隊が暴徒化》 “危険すぎる通院”で危ぶまれる「真美子さんと娘の健康」、父の日を前に夫婦が迎えた「LAでの受難」
NEWSポストセブン
来来亭・浜松幸店の店主が異物混入の詳細を明かした(右は来来亭公式Xより)
《“ウジ虫混入ラーメン”が物議の来来亭》店主が明かした“当日の対応”「店舗内の目視では、虫は確認できなかった」「すぐにラーメンと餃子を作り直して」
NEWSポストセブン
金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《金スマ『ひとり農業』ロケ地が耕作放棄地に…》名物ディレクター・ヘルムート氏が畑の所有者に「農地はお返しします」
NEWSポストセブン