バブルと指摘されて久しい中国不動産市場だが、その崩壊を象徴するのが、街のゴーストタウン化である。中国語で「鬼城(グイチェン)」と呼ぶこの現象は、中国各地で見られる。ノンフィクションライター・安田峰俊氏がその一つ内モンゴル自治区オルドス市の状況をレポートする。
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中国一の鬼城と噂されるのがオルドス市だ。同市は、新市街であるカンバーシ新区のほぼ全域が鬼城化。20kmほど離れた旧市街にも鬼城が目立ち、合計すれば山手線の内側面積に相当する広大な空間が丸ごと無人都市になっている。
「石炭の産地であるオルドスは、2000年代前半から露天掘り技術の発達で産出量が激増。爆発的な経済成長が始まりました」
現地出身の留学生、ジャルガル氏(仮名)は語る。やがて投資が集中し、都市開発が進んだ。その後の展開は他の街よりも極端だった。
「経済成長の幅があまりに大きいため、開発をあせる市政府側は高額で土地を買収。結果、売却金で潤った一般住民までも投資に参入したんです。普通の家庭でも3~4個の不動産を持つのが当たり前になっていきました」(同)
結果、2010年には同市の一人当たりGDPが全国1位に。街にはフェラーリやロールスロイスが溢れ、美容室や買い物のためだけにビジネスクラスで北京まで飛ぶ金持ちマダムまでも多数出現した。
だが、2012年に石炭の国際価格が暴落し、資源バブルも崩壊する。現在の石炭価格は往年の半額程度で、炭鉱の6割が休業中だ。市内在住の30代の女性教員は話す。
「2012年時点で1平方mあたり1万元近くしたカンバーシ地区中心部の不動産価格も、いまや半額以下に。売り抜けに失敗した市民は大勢います」
夜間に街を歩くと、かつては100万人の入居が見込まれた無人のマンション群が寂しく佇む。「生きた」物件であることを示すため、外壁の照明だけが煌々と輝く姿がかえって不気味だ。
※SAPIO2015年10月号