中国共産党には反腐敗キャンペーンで逮捕された幹部が数々いるが、とりわけ酷かったのが令計画だ。一体何をしたのか、ジャーナリストの相馬勝氏がレポートする。
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筆者の手元に1枚の中国共産党の内部文書がある。胡錦濤・前国家主席の側近中の側近で、「党の政治規律や規則、組織の規律の厳重違反」などの罪状で、7月下旬に党籍を剥奪された令計画・元党中央弁公庁主任に関するもの。令計画は少なくとも27人の女性と姦通し、7人の愛人を囲い、5人の私生児をもうけていたという報告書だ。
党中央政治局会議で発表された罪状は党規律違反など6か条に及ぶ。そのなかでも特に異例なのは「多数の女性と姦通し、権色交易(女性を貢ぎ物として幹部に捧げる)を進めた」というものである。
これまで反腐敗キャンペーンで逮捕された幹部の罪状のなかでも「姦通」は珍しくないが、「権色交易」という罪状が出てきたのは初めてだ。それだけ、令計画が多数の女性を汚職の道具に使っていたことを表している。
また、令計画自身も日本の官房長官に当たる中国共産党中央弁公室主任という絶大なる権力を利用して、多数の女性を弄んできた。北京の消息筋は「その数は少なくとも27人で、これらの具体的な数字は当局が押収した計画の日記に記されていた」と明かす。
当局に押収された日記は1999年10月、党中央弁公庁研究室主任に就任したときから、身柄を拘束された2014年末までの分で、事務能力があり、勤勉な計画らしく、身辺の出来事を細かく記述しているという。
令計画は胡錦濤主席の側近として、分刻みのスケジュールをこなす忙しさだったが、女性らとの密会は仕事が終わったあとの未明の時間で、毎週2回と決まっており、その後、中南海に戻り、午前7時からの党の会合を主宰していた。驚くべきタフネスぶりだ。
7人の愛人には毎月、手当を渡していた。2003年7月から2012年2月までの約8年半の間に、それぞれ600万元(約1億2000万円)から1200万元(約2億4000万円)とまちまちだった。
女性たちに渡した手当の合計は8400万元(約16億8000万円)という膨大な額だ。これらの愛人との間に5人の子どもをもうけており、愛人や私生児の生活費のために、汚職に手を染めていたともいえるだろう。
※SAPIO2015年10月号