もっぱら保湿の機能性を競ったのは、ハンドクリームにとって過去のこと。ロクシタンのローズをはじめとしたバラの香りが人気を集めたのを皮切りに、化粧品ブランドから様々な花や果物の香りのハンドクリームが登場した。香り高いハンドクリームの人気はすっかり定着し、クリスマスやホワイトデーなど、女性へのプレゼント用にとロクシタンのレジで男性が列を作るのは珍しくない光景だ。
よそ行きだけでなく、普段使うものにも同様の変化が起きている。ドラッグストアに並ぶハンドクリームというと実用第一で無香料で薬品のような匂いが多かったが、ここでも花や果物の香りが増えている。たとえば家族で使われることも多い「アトリックス」にもピーチティーなどの甘い香りが、外国人にも人気の「ユースキン」からはジャパニーズローズとラベンダーの香りがするチューブタイプのハンドクリームが登場している。
フローラルやフルーティな香りが人気の中心だが、これからはバニラなどお菓子のような香りに注目が集まりそうだという。
「職場のデスクに何種類も用意しておいて、そのときの気分によってハンドクリームを使い分けています。ラベンダーとかチェリーとかおいてありますね。寒くなってくるとバニラの香りがいいですよ。まだ日本だと少ないですけど、ときどき限定で出るので逃さず買っています」(30代会社員)
香水だと周囲に匂いを振りまいてしまうけれど、ハンドクリームなら自分の手もととその周囲だけで、香りが薄くなるのも早い。香りによって気分を変えるハンドクリームの使い方は、若い女性を発信源としてじわじわ広がってゆきそうだ。