だが、栄養学の専門家はこの食生活をどう評価するのか。予防医学に詳しい京都府立医科大学特任教授・宇山恵子氏は語る。
「通常、フルーツしか食べないと、たんぱく質や脂質が不足し、ビタミンにも偏りが出て健康を害しますが、中野さんの場合、数多くの種類のフルーツを食べているので問題が出ていないのでしょう。
ただし、ある特定の種類のものしか食べない食生活を続けていると、精神的なストレスがたまり、心身のバランスを崩して病気になることが多い。中野さんのように“すごい信念”があれば、別なのかもしれませんが……」
友人や知人からは「死ぬぞ」「何かあったら親不孝だ」と警告され、味方であるはずのフルーツ業界の人からも「君が倒れたらフルーツのイメージが逆に悪くなる」と、あまりよく思われていないという中野氏。なのに、なぜそれほどまでにフルーツ生活にこだわるのか。
「発展途上国では質の悪い水を飲んで下痢を起こしたり、栄養失調で死んでしまう子供が多い。フルーツは栄養と水の両方の問題を解決します。また有名な宗教でフルーツの摂取が禁じられているという話は聞いたことがないので、フルーツを食べていれば宗教対立も避けられる。私はフルーツを通じて世界を平和にしたいんです」
なんとも大きな夢を真顔で語る中野氏。聞けば、フルーツ生活を始めてからすね毛が完全に消え、体臭もほとんどなくなったという。健康診断で異常がなくても、別の意味で「大丈夫か?」と思うのは、記者だけだろうか……。
※週刊ポスト2015年10月9日号