日本を代表する工芸品で、木や紙に漆を重ねて塗って作る漆器。
「最近は、引き出物などに使われることも少なく、漆器文化がすたれてしまうのではと危機感を強く抱いています」
創業90余年、香川漆器を作り続ける「一和堂工芸」社長・浅野道子さんはそう語る。平成12年に社長を受け継いだ浅野さんは総合プロデューサーとして、就任早々、デザインや色の改革に着手。そして、色漆を使ったカジュアルなデザインの器を発表する。
「漆器の商品は赤や黒などの伝統色が中心。漆の初心者や若い人向けにはカラフルなものがあるといいなと思ったんです」(浅野さん・以下同)
そうして浅野さんが手がけた器は、黄緑やピンクなど12色展開で、1年間に約2000個を販売する大ヒット商品になった。その後、平成23年に発表した“薔薇の器”は、4種の器を重ねると、薔薇の花に見える画期的なデザインで、国内外からも評価が高い。
「花びらの重なり部分を表す切れ込みは、職人が後から手彫で加えます。色は薔薇らしいピンクにこだわりました」
特注で薔薇の形の器作りを木工業者に依頼し、完成するまでに半年。一和堂工芸で鮮やかなピンク色に仕上げるために、漆の色作りから、重ね塗りの回数など、試作をさらに半年以上続けた。
そしてピンクが完成したのを機に、赤、紫、黒を加えた4色の薔薇の器を30セット売り出すと、ほぼ完売。その後は材料が揃わず、追加生産できない状態が続いている。
「しまいこまずにインテリアとして飾っても、もちろん、普段遣いにも最適ですよ」
※女性セブン2015年10月8日号