国内

「貧困は孤独と混乱がセットになっている」と専門家指摘する

 貧困女子が社会問題になったのは数年前のことだが、その問題は依然として解消されていない。救いの手が差し伸べられないばかりか、10月からスタートしたマイナンバー制度が、貧困女子に追い打ちをかけかねない。

「マイナンバーが本格的に始まると、副業ができなくなる可能性が高い。これまで、会社の給料だけではやっていけないと、こっそりアルバイトをしていた人もいましたが、それができなくなる。

 また、水商売など、なるべく身分を明かさずに働きたいと思っていた女性にとっても痛手です。偽名や年齢詐称が完全に不可能になって働く場所がなくなることで、生活が苦しくなる女性は増えることが予想されます」(全国紙記者)

 今や、働いている20~64才の一人暮らし女性のうち、3人に1人が貧困状態といわれている。しかし、事態はさらに深刻だ。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんが言う。

「年収200万円以下とか、月収から家賃を引いた額が8万5000円未満など、貧困女子を定義づける方法はいくつかあります。また、東京都の単身者の生活保護費は13万2930円ですから、これもひとつの目安にはなりますね。

 では、収入があれば貧困ではないかというと、それは違う。クレジットカードを無計画に使い、月の可処分所得の半額以上を返済に充てている人や、貯金が0円という人は、貧困女子になるリスクが極めて高いのです」(風呂内さん)

 数千万円の貯金があっても「下流老人」に転落する時代、収入のあるなしだけでは計れない、“隠れ貧困女子”、“貧困女子予備群”が大勢いる。

 収入はあっても借金がある、仕事に就いていても貯金がない―一概に「貧困女子」といってもケースはさまざまだ。『最貧困女子』(幻冬舎刊)の著者で、これまで多くの貧困女子を取材してきた鈴木大介さんは「貧困は孤独と混乱がセットになっている」と言う。

「収入が20万円あっても、各種の支払いをした後の可処分所得が極端に少なければ生きてはいけません。貧困とは単に見た目の所得の多寡ではなく、極端に可処分所得が低い状態で、かつ頼ったり相談する相手がなく、そこから自力で抜け出す方法が考えられないような混乱に追い込まれている状態かと思います」

 貧困は心の病気と同じようなものと、鈴木さんが続ける。

「貧困状態にあることは、心や脳の病気になっていることと同じで、そこから抜け出すためには一層、医療寄りの支援が必要と感じています。“生活保護をやるからさっさと働けるようになれ”ではなく、まず混乱と不安から抜け出すための休息と治癒の時間が必要です。

 また、親が貧困だったり、家庭環境が安定していないなど、先天的な貧困は子供に連鎖します。一方で最近多いのは、育った環境によらない“後天的”な貧困です。せっかく就職してもブラック企業だったり、職場の人間関係に恵まれなかったりして、失職し、頼ったり相談できる親も友達もおらずに混乱状態になれば、誰しも容易に貧困状態に陥ってしまいます。

 これは決して他人事ではありません。“自分も、自分の娘もそうかもしれない”と危機感を持ちましょう」(鈴木さん)

 今必要なのは、貧困に陥る前に、自分が“隠れ貧困”もしくは“貧困予備群”だと気づくことなのかもしれない。

※女性セブン2015年10月15日

関連キーワード

トピックス

10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
ヒグマが自動車事故と同等の力で夫の皮膚や体内組織を損傷…60代夫婦が「熊の通り道」で直面した“衝撃の恐怖体験”《2000年代に発生したクマ被害》
NEWSポストセブン
対談を行った歌人の俵万智さんと動物言語学者の鈴木俊貴さん
歌人・俵万智さんと「鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴さんが送る令和の子どもたちへメッセージ「体験を言葉で振り返る時間こそが人間のいとなみ」【特別対談】
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン
佳子さまの“ショッキングピンク”のドレスが話題に(時事通信フォト)
《5万円超の“蛍光ピンク服”》佳子さまがお召しになった“推しブランド”…過去にもロイヤルブルーの “イロチ”ドレス、ブラジル訪問では「カメリアワンピース」が話題に
NEWSポストセブン
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン