国際情報

天津大爆発は氷山の一角 同様の事故が20か月で30件以上発生

 8月12日に中国・天津の化学工場で発生した大爆発事故は、被害を受けた面積が約20平方キロ(東京ドーム1500個以上)に及び、中国経済に深刻な影響を与えている。政府が情報統制の姿勢を強める中、事故の“爆心地”への潜入に成功したジャーナリストの相馬勝氏が、爆発事故の処理に追われる中国政府の対応について解説する。

 * * *
 事故後1か月以上経ったいまも爆発原因は解明されず、事故現場の後片付けも終わっていないというのに、天津市当局は9月上旬、この爆発跡地に「生態公園」(エコパーク)を建設する計画を明らかにした。

 計画では、公園内に犠牲になった消防士らを悼む英雄記念碑のほか、幼稚園や小学校を建設するとしており、11月にも着工し来年7月に完成する予定。だが、ネット上では「責任追及が先だ。そうでないと、亡くなった消防士の無念さはいかばかりだろうか。彼らの霊が浮かばれない」「まだ残留化学物質があるのに、幼稚園や小学校を建設するのは非常識過ぎる」などとの批判の声が上がっている。

 公園案は民衆の不満を抑えるための習近平指導部の浅慮ともいうべきものだろう。住民はおろか、中国の国民も事故原因の究明を望んでいる。なぜならば、北京でも上海でも、全国各地で天津市のような不法な危険物の大量貯蔵が進んでいるとされるからだ。

 これを裏付けるように、天津市の大規模爆発の10日後の22日夜、山東省の化学工場でも大規模な爆発があり、工場の従業員1人が死亡、9人が負傷し病院に搬送された。さらに、23、24日にも2件の工場で立て続けに事故が起こるなど、8月だけでも計6件の爆発事故が発生した。

 また、米政府系報道機関「ボイス・オブ・アメリカ」によると、昨年1月から今年8月末までの間に30件以上の爆発事故が起きており、「天津の大爆発は氷山の一角にすぎない」と国際的な環境保護団体「グリーンピース」は警告している。

 筆者が北京で会った外交筋は「今回の事故は氷山の一角といえる。この事故の後に、山東省など6か所で同じような爆発事故が起こっていることからも明らかだ。このような大災害を繰り返さないためにも、事故原因の隠蔽は許されない」と指摘する。

 習近平指導部は急激な経済発展の陰で見逃されてきた、ずさんな化学薬品の管理などの“人災事故”に今後も悩まされ続けることになろう。

※SAPIO2015年11月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
日本初となる薬局で買える大正製薬の内臓脂肪減少薬「アライ」
日本上陸の内臓脂肪減少薬「アライ」 脂肪分解酵素の働きを抑制、摂取した脂肪の約25%が体内に吸収されず、代わりに体内の脂肪を消費
週刊ポスト
専修大サッカー部を辞任していた源平監督(アフロスポーツ)
《「障害者かと思った」と暴言か》専修大サッカー部監督がパワハラ・経理不正疑惑で辞任していた 大学は「警察に相談している」と回答
NEWSポストセブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
日本製鉄によるUSスチールの買収計画
【日本製鉄のUSスチール買収問題】バイデンもトランプも否定的だが「選挙中の発言に一喜一憂すべきではない」元経産官僚が読み解く
NEWSポストセブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン