それぞれの番組でインタビューを見ていて気づくのは、素人の2極化です。かつてはテレビに出たい人がほとんどで、実際に出た人は自慢していたものですが、現在はそういう人が半数以下になったとみています。その代わり、テレビに出たい人は、ハロウィンで大騒ぎし、ラグビーW杯のにわかファンになる人のようなノリの良さがあり、番組を大いに盛り上げるようになっています。
つまり、「テレビに出たい人の分母は減っているけど、面白さの質は上がっている」ということ。これまで素人インタビュー系のバラエティー番組が少なかったため、面白い素人を発掘できる余地はまだまだ残っていると思われます。
さらにこれらの番組が支持されているのは、テレビに出たい人が「ただ面白いだけではない」ことも大きいでしょう。よくよく話を聞くと、夢や希望、暗い過去や深い悩みなどの人間ドラマが次々に出てくる、という演出上の振り幅も魅力の1つになっています。「へえ~、こんな人生もあるんだ」と他人の生活や人生をのぞきできるのも醍醐味と言えるでしょう。
最後にもう1つ。素人インタビュー番組がここまで増えている理由は、制作サイド側の事情もあります。何しろタレントもスタジオも、衣装もヘアメイクもほとんどいらないだけに超低予算。広告収入減による制作費カットが求められるテレビ局にとって、素人インタビュー番組は優良コンテンツなのです。
ただ、ネタを探すところからはじめなければいけない上に、素人はタレントのようにコントロールが利かないなど、スタッフの苦労は計り知れません。「朝から真夜中まで街頭に張りついて成果なし」なんてことも多く、精神的・肉体的な疲労度が極めて高いため、クオリティのキープは難しいのです。私自身も大ファンの『さんま・玉緒のお年玉! あんたの夢をかなえたろか』(TBS系)が年1回のペースを守っているのもそのためでしょう。
ともあれ、素人の面白さは無限大。それをどう引き出すのか、今まさにテレビマンたちの頭と体力が問われているのです。
【木村隆志】
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』(TAC出版)など。